クトゥルフ神話TRPG
舞台:現代、イタリア(ヴェネツィア)
時間:テキセ12~15時間(RPによって更に増える)
推奨人数:2~3人
難易度:普通・ロストあり
推奨技能:目星、精神分析、英語
(〈英語〉を30%ほど所持するPCが最低限一名いることが望ましい)
準推奨技能(なくても問題ない):天文学、イタリア語
※この話はヴェネツィアを舞台に借りたフィクションです。
※このシナリオでは、言語技能30%を取っていれば、ネイティブの人と流暢に会話することができる(一般的な会話や読み書きは問題なくできる)としている。
※クトゥルフ6版対応です。7版への改変はご自由にどうぞ。
長期休みを使ってイタリア旅行に出発した探索者たち。ローマを観光したのちトレーンで移動し、たどり着いたヴェネツィアにて4泊5日の予定で楽しもうとしているが……
※探索者たちは共に旅行する親しい関係にあること、また一緒に行動することを想定している。
※時期を5~9月の間に設定すればシナリオの描写と齟齬が発生しないが、話の展開は季節と関係がないため変更は可能である。
本作は、「Chaosium Inc.」「株式会社アークライト」「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
©Chaosium Inc./アークライト/KADOKAWA
本作を遊ぶのにクトゥルフ神話TRPGの基本ルールブックが必要です。本文中の「ルルブ」「ルールブック」表記は基本ルールブックを指しています。
この先はKPをする方のみ読み進めてください。
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国立図書館に就任したばかりの館長は、膨大な数の書物に触れる機会があり、そこで偶然一冊の魔導書に出会った。
その一冊に不思議な魅力を感じてしまい、館長はついに手を伸ばしてしまった。
彼の知識への探求心は歪められ、「本に書かれた神についてもっと知りたい……そのためには直接呼び出して、この目で確かめなければ」と願う――彼はすでに、正気を失っていた。
こうして魔導書に書かれた「偉大なる神」に会うために、彼は方法を調べ、人を集め、そして神を――「クトゥルフ」を召喚すると決意したのであった。
46歳、イタリア人男性。イタリア語と英語を流暢に話せる。国立マルチャーナ図書館の館長であり、「組織」の創立者。事件の黒幕である。知識欲が一般の人より強い以外は、普通の人間だった。しかし図書館で偶然《ルルイエ異本》を発見し、読み進めていくうちにその内容に魅了されてしまった。「偉大なる神」の存在を自分の目で確かめるためにはどのような手段でも迷わず実行するだろう。
カルロのステータスは【本拠地探索:隠し部屋】の項目をご参照ください。SAN値は記載していないが、「門」を使って移動するため0ではない。ただし、彼は魔導書の研究を繰り返しているので、残り僅かなのは間違いないだろう。SAN0ではないとはいえ、彼は確かに神に心酔しているので、KPはそのようなRPを行っても構わない。
31歳、イタリア人男性。多国の言語を話せるため、勧誘・交渉を任されている。組織の幹部にあたるポジションで、滅多に現れないリーダーよりも他のメンバーから信頼を得ている。最初に悪夢を見た人たちの中の一人で、そのためカルロに勧誘され、「偉大なる神」について説明を受けたときにすんなりと彼を信用し、組織の立ち上げに協力した。彼は話が通じる人で、神に対する信仰があるものの、探索者がきちんと証拠を見つけてカルロの嘘を証明すれば、事実を理解してくれる。
ジャンとの戦闘を想定していないためステータスを決めていないが、KPが必要に応じて決めて構わない。
26歳、イタリア人男性。警官であり、イタリア語と英語を話せる。集団失踪事件を調べているうちに組織にたどり着いたが、儀式に参加した際不定の狂気に陥って、任務の事を忘れ、「偉大なる神」の信者となった。それからは本拠地内に生活しているため、失踪扱いとなり家族に探されている。
探索者が彼を正気に戻せば、組織の調査に協力してくれないかと提案する。本来の彼は冷静でありながらも正義感が強い人なので、探索者が拒絶しても独自に捜査していくのだろう。探索者が石像を破壊し、外部との通信が可能になった瞬間、彼は即座に同僚と連絡を取り、支援を要請する。
レオとの戦闘を想定していないためステータスを決めていないが、KPが必要に応じて決めて構わない。
2か月前:カルロ・パボーニが国立図書館に就任
1か月前:カルロが魔導書《ルルイエ異本》(複写・英語訳)の一部の内容を入手、解読を始める
3週間前:カルロがクトゥルフとの接触を試みる。ヴェネツィア住人の数人が悪夢を見始める
2週間前:クトゥルフへの接触を試みた影響で、悪夢を見る人がだんだんと増え、「全員似たような悪夢を見ている」と気づく人が現れ始める
1週間前:独自の儀式を行うため、カルロが「組織」を立ち上げ、生贄を集め始めた(失踪事件が始まった)
6日前:海の水位上昇に異常が観測され、日に日に悪化。悪夢も比例して悪化していく
3日前:失踪事件の捜査に当たっていた警察官のレオが、組織に潜入するも洗脳される(行方不明扱いに)
1日前:世界滅亡の予言が地域の新聞紙に載る
当日:シナリオスタート
以下のルールは、探索者の母国語が英語またはイタリア語ではないことを想定したものである。そうではない場合、KPは探索者の母国語に応じて一部のロールを省略しても構わない。
シナリオ内に〈言語〉×3のロールを振らせる場面がいくつかあるが、それらのロールに挑む探索者がその言語を30%以上取っている場合、ロールは自動成功とする。
本来は34%以上が自動成功になるのだが、30%があれば日常会話など問題なく行えるという前提に基づいてこのような処理にした。今後、シナリオ内に補足がない限りこのルールが適用される(事前にPLに教えておくと進行がスムーズになるだろう)。
なお、×3ではなく、普通の〈言語〉ロールの場合なら自動成功はなしとする。
これ以降、※から始まるのはKP情報とする。
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探索者たちはトレーンに乗ってヴェネツィアへ向かっている。長期休みを利用して10日ほどのイタリア旅行に来ているが、それも後半に差し掛かった。ローマの観光を終えて、次は4泊5日でヴェネツィアに滞在予定。昼間に出発したトレーンに揺られて数時間、海に囲まれる線路を走り抜けた列車はついに目的地、ヴェネツィアへとたどり着いた。
サンタルチア駅で下車した時刻は16時ぐらい。水上バス(船)に15分ぐらい乗って、最寄りの駅で降りてから歩いてすぐのところに予約したホテルがある。観光するには少し遅い時間だが、ホテルに荷物を置いてから周辺を見て回るぐらいはできるだろう。また、晩御飯を食べに行くのにもちょうどいい時間だ。
○ホテル
初日にチェックインしてから、シナリオ内いつでも探索できる。また、探索せずにホテル内を歩き回るだけなら、時間を消費せず観光の合間にできるものとする。
チェックインすると、スタッフが部屋の鍵を渡してくれる(2人や3人部屋があるからPLの要望があれば部屋割りも決めておくといい)。その時、カウンターに無料の【観光パンフレット】が置いてあるのを〈目星〉で発見させるのもいいし、チェックインを済ませたらスタッフが探索者に渡してもいい。また、後日でももらうことができる。
ロビーで〈目星〉すれば、新聞ラックに最近数日の新聞紙が置いてある(一度成功すれば、以降はロールなしで新聞を読むことができる)。新聞内容は【新聞】の項目を参照してください。
寝泊りする部屋は普通のホテルの部屋で、特に情報はない。また、ホテルにありそうな施設(レストランなど)も利用できるが、こちらも特に情報はない。
【観光パンフレット】
有名な観光スポットとその周辺のお土産屋、飲食店の情報が載っている。
サンマルコ広場…世界遺産に登録されているサンマルコ寺院や、ドゥカーレ宮殿、ヨーロッパ最古のカフェなどもそこにある。
カナルグランデ大運河…ヴェネツィアの象徴である、ゴンドラの乗り場が点在している。
リアルト橋…大運河にかかる橋、上には露店が立ち並ぶ。橋の近くに市場もある。
ムラーノ島…離島。ヴェネツィアングラスの産地であり、その店や工房がたくさんある島。ガラス博物館もある。
ブラーノ島…離島。レース編みの島として有名で、博物館もある。カラフルな町並みが特徴的。
リド島…離島。国際映画祭の開催地であり、大きなビーチがある(普段は誰でも利用できる)。
○町中
本島を散策することができる。ただしまだ事件に関する情報はほとんど知られていない。
海を見に行くのなら、日が落ちていくにつれ涼しい風が吹いて、少し肌寒さを感じる。また、探索者たちが訪れたことによって、二日目以降に追加のロールが発生する(後述)。
○レストラン/バー
夕食は探索者たちの希望に沿って、レストランもしくはバーなどで取れる。有名なイタリアン料理(パスタ、ピッツァなど)ならきっとお望みの物が見つけられるだろう。
探索者たちが席に座ったら、もしくは注文を済ませたら、〈聞き耳〉か〈幸運〉を振らせてください。成功すれば近くのテーブルでご飯を食べている人たちの会話を、さらに〈英語〉×3に成功することで聞き取れる:
「なんか昨日も一昨日も変な夢を見ちゃってよく眠れなかったんだよね……ヴェネツィアに来てからだけど、ホテルのベッドが合わないのかしら」
「うーん、いつもの君ならベッドが変わってもぐっすり寝られるんじゃなかったっけ?珍しいこともあるんだな」
同じく観光客であるカップルが夢について話している。もし話しかけて詳細を聞くのなら、女性が「なんか怖い夢だと思うけれど、詳細は覚えてないの。ごめんね」と答える。男性は悪夢を見ていないようだ。
※夢は全員見ているわけではないため、観光客の男は影響されていなかった。ただ、ヴェネツィアの住民は結構な数が夢を見ているので、もしPLが町中で聞き込みしたいと提案するのなら、〈幸運〉2回(住民であるのと、夢を見ていることで2回)に成功したら悪夢を見た人を見つけることができる。ただし話を聞くには〈イタリア語〉×3のロールに成功する必要がある。住民が話す内容は、探索者たちがこれから見ることになる夢と似た感じのものだ(起きると記憶が多少薄れるため、描写はそこまではっきりとせず、SANチェックもなし)。
ホテル内の探索については上記【ホテル】の項目通りにできる。また、就寝前にニュースを見ることや、ネットを検索して新聞を読むこともできる。どれも内容は1日目の新聞と同じものなので、ここで情報を取り逃がしても問題ない。
PLが希望するなら、探索者の宿泊プランに朝食が含まれていることにして構わない。その場合7時から10時までホテル内のレストランで食べられるということを伝える。
探索者たちが就寝したら、【悪夢】の項目に移行してください。
※翌日から探索できる場所は一日最大3箇所まで。PLたちが予定の相談に時間を使い過ぎた場合、このことを先に伝えても構わない。
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初日の新聞はホテルで読むことができる。2日目以降なら、店で新聞を購入することもできる。また、探索者たちがネットやテレビのニュースをチェックすれば、同じ内容が手に入れられる。
ヴェネツィアのローカルニュースであるため、読むには〈英語〉×3または〈イタリア語〉×3のロールに成功する必要がある。翻訳アプリ、翻訳サイトなどを使う場合、KPの裁量で補正をつけることや、自動成功にしても構わない。
また、前日までの新聞を読んでいなかった場合、その内容も一緒に渡していい(例:3日目に初めて新聞を読んだ場合、1日目と2日目の内容も一緒に手に入れる)。
なお、新聞を読むのにかかる時間は観光に影響しないものとする(時間帯を消費する必要がなく、観光に出かける前後や、観光の合間にできる)。
とある「予言」に関する続報が載っている。
ヴェネツィア内にとある「予言」が広まりつつある。その内容は、「一週間以内に、世界は滅亡する」というものだ。滅亡の原因は数多くのヴェネツィア市民が近ごろ見ている夢と関係があるとも。
なお、その悪夢の内容は「ヴェネツィアをはじめ、世界中の町が滅んでいく」となっている。悪夢を見る条件は不明だが、かなりの人数が断続的に見ている模様。確認できる限りでは、3週前から悪夢を見始めた人もいるそうだ。
悪夢のこともあって、「予言」を信じる人が増えつつある。パニックに陥る人もそれなりにいるので、ヴェネツィアでは問題視されている。
※予言の出所はネットであり、書き込まれた・ニュースに取り上げられたのは両方ともここ一、二日でのことのため、まだ予言自体を知っていない住民も多くいるだろう。
長期に渡り悪夢を見ている人の中で、精神に異常をきたした人が続出していることが判明した。地方政府は医療組織と連携を図ってこの件に取り掛かろうとしている。
また、先週からヴェネツィア各地にて海の異常な水位上昇が観測されている。潮の満ち引きによる影響ではないらしいが、実際の原因は専門家たちが調査中だ。
※1日目で報道された「予言」と合わせて、〈アイデア〉が振れる。成功で、このまま水位上昇が続けていくと、ヴェネツィアが沈んでしまうかもしれない。「予言」が現実になる可能性がある、という発想に至った探索者はSANチェック、0/1D2。ただ、【ムラーノ島】で起きるイベントで先にSANチェックをした場合、このロールは免除となる。
※この情報が開示された以降、海辺に訪れる探索者が調べれば実際に水位がいつでも地面ぎりぎりまで上昇していることを確認できる(【ヴェネツィア観光】を行う際のロールによって浸水することもある)。また、この情報を知る前に海辺を訪れたことがある場合(1日目に町を散策したなど)、〈アイデア〉成功で水位が上昇しているのは事実だと思い出せる。
先週から、ヴェネツィア内で失踪事件が何件も起きたことが判明した。収束するどころか、失踪者が増えていくばかりだ。
警察の捜査ではまだ失踪者たちを発見していない。記者の調べによると、失踪者は世界滅亡の予言を信じ込んで、それに怯えている人が多いらしい。
ある組織の広告が掲載されている。「我々と一緒に、世界滅亡の危機から自分の身を護ろう!」という呼びかけとともに、予言は真実であることと、自分たちにはそれを回避して生き残るための方法があることが書かれている。それを実現するためには人手が必要で、手伝ってくれる人を募集している。広告には正八角形の枠の中に水滴のようなマークがあり、そのマークがプリントされた服を着ているスタッフが大運河沿いにいるのでそれを目印にして集まってほしい、とのこと。
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ヴェネツィアにいる間、探索者全員は毎晩悪夢を見る。それはクトゥルフが復活する夢であり、「予言」の内容にちなんだものである。
もしずっと寝ないのなら、悪夢を回避することは可能だが、1日徹夜するたびにすべての技能に-20の補正をつける(累計)。また、次の夜にCON×3に成功しなければ、PCの意思関係なく寝てしまう。
また、徹夜した日の夢は見逃してしまったことになる。例えば1日目に徹夜して、2日目に寝た場合、その夜に見る悪夢は2日目の内容のみになる。
探索者は急に意識がどこかに引き寄せられたように感じる。
周りに広がるのは暗闇だけで、なぜか身動きが取れない。必死にあがこうとしても、だんだんと息苦しくなっていく。もうダメだ、と思った瞬間、探索者ははっとして目が覚める。
まるで窒息を体験したような探索者はSANチェック、0/1D2。
引き寄せられる感覚を再び味わいながら、探索者が目を開けると、町のあちこちが水浸しになっていた。
ここにいては危険だ。そう思って足を動かそうとしても上手くいかず、立ち尽くしたままにいると、頭上から何かが迫る気配を感じる。
何事かと見上げれば……それは、「波」だった。町を覆うほどの高い波が探索者に襲い掛かる。強い衝撃とともに、探索者の体そのまま飲み込まれていく――
またもや息苦しい目覚めを迎えた探索者はSANチェック、1/1D3。
あたりが暗闇に包まれている。空は雲に覆われて、光は地上に届かず、朝か夜かもよくわからない。ただ、波の音が聞こえる。
ふと足元を見ると、いつの間にか地面は水浸しになり、水位はどんどん上昇していく。
そして水が流れてくる方向から、背筋を凍らせるような感覚を覚える。
振り向けば、巨大な黒い影が海中から浮かび上がっている。人よりも遙かに大きい体を動かし、その影は探索者たちに向かって「手」を伸ばす。途端、海は激しく揺らされ、津波が引き起こされた。探索者たちはなすすべもなく、ただ海に引きずり込まれていくだけだった。
町に訪れるであろう災難、その恐ろしい光景を見た探索者たちはSANチェック、1/1D4+1。
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2~4日目は、朝、昼、夕方と3つの時間帯に分けて、1つの時間帯に1箇所の観光スポットへ向かうことができる。
観光スポットに訪れれば、その項目にあるイベントが発生する。詳しくは各項目を参照してください。各スポットの簡単な紹介も添えたが、PCたちの行動によってKPが自由に描写を付け足して構わない。要望があれば各種判定を振らせても良いだろう(観光スポットでの撮影で満足の一枚を撮れたかどうかの〈写真術〉、リド島のビーチで泳ぐのに〈水泳〉など)。
観光ができない夜の時間では、基本的にレストランやバーに訪れて夕食を取るか、ホテル内での行動のみになる。1日目の【レストラン/バー】での情報を取り逃がした場合、ここで伝えてもいい。また、KPの裁量で、当日の新聞内容を客が議論していることにしてもいい(〈聞き耳〉や〈言語〉など適切なロールで情報を与えてもいい)。
※4日目が終了した(日付が変わった)時点で、図書館館長カルロの計画を止められなかった(組織本拠地の石像を破壊できなかった)場合、【END D:クトゥルフの呼び声】へ移行する。
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中央にある広場を囲むように、サンマルコ寺院、ドゥカーレ宮殿、鐘楼、国立マルチャーナ図書館、カフェ・フローリアン、などがある。
寺院の外を飾る石の彫像や、内部天井のきらびやかなモザイク画はどれも目を引くものばかりだ。ドゥカーレ宮殿の中には美術館が開設されていて、有名なため息橋もここにある。鐘楼は100メートル近くの高さがあり、上に登ればヴェネツィアの町を一望できるだろう。図書館は残念ながら観光客には利用できないが、一通り観光すれば、ヨーロッパ最古のカフェにて一休みするにはちょうどいい時間に違いない。
○イベント:消えたマルチャーナ図書館館長
ヨーロッパ最古のカフェとされるカフェ・フローリアンにて、探索者たちは一休みできる。広場がよく見えるテラス席で生演奏のクラシック音楽を聞きながら、それぞれ好みの一杯を味わっていると、近くのテーブルの話声が耳に入る(カフェに行かないのであれば、次の目的地へ向かう途中カフェに通りかかったこととする)。
〈聞き耳〉成功で話の内容が聞こえて、〈英語〉×3に成功したら内容を理解できる。「まさか館長がいないなんてね」「ここ数日図書館に来ていないんですよね。連絡も取れなくて……」と、スーツを着た二人の男性が話している。内容からして、一人は図書館の職員で、もう一人は図書館の館長に会いに来た客のようだ。
※本来、観光客には全く関係のない情報のため、二人に話を聞こうとしても答えてくれないし、追求すれば変人だと思われてこの場から立ち去ってしまう。このイベントはただPLたちに、館長は事件と関係しているかもしれない、という印象を与えるための物だ。
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ヴェネツィア本島を二分するS字形の大運河。水上バスの駅がいくつか設置され、お客さんを各観光スポットまで運んでくれる。また、ヴェネツィアを代表する乗り物であるゴンドラの乗り場も点在していて、料金がなかなか高いものの、観光客には大人気である。
○イベント:謎の組織
初めてこの場所に訪れた場合、ゴンドラから降りると(もしくは運河沿いに散歩していると)、運河の向こう岸に黒いローブを着ている人を見かけるが、向かうには時間がかかるためその間に彼はこの場所から離れてしまう。
二度目以降は、探索者たちがこの人を探したいと宣言すれば自動成功する(時間をかけて探すため、行動回数は通常通り消費する。彼を始めて見かけた後にそのまま追いかけて探そうとする場合、次の時間帯を消費することになると提示してください)。この場合、【キーイベント:組織への道】の項目に進んでください。
初回から彼に〈目星〉を振れる。成功で、ローブの背中側に、正八角形の枠の中に水滴のような模様がプリントされているのが見える。リド島でポスターを見たことのある、もしくは4日目の新聞を読んだ探索者はさらに〈アイデア〉が振れる、成功で、それがポスターや新聞に載った図案と同じ模様だと気づく(リアルアイデアでも可)。彼は道を行く人に何かチラシのような物を配っているが、受け取ってくれる人はあまりいないようだ。
○キーイベント:組織への道
ローブの人物は「組織」のスタッフである。彼は多国の言語が話せるので、会話をするのに言語ロールを行う必要がない。手に持っているチラシはリド島にあるポスターの内容と似たようなものであり、探索者が組織に参加する意思を表明しない限り、「ぜひ読んでください」と言ってチラシだけ配ったらそそくさに離れていってしまう(他の人にチラシを配るために)。
彼に組織に参加したいと言えば、「本当かい?ありがとう、これで君たちも救われるよ」と喜んで受け入れてくれる。探索者たちは彼や組織について聞くことができる。
・彼について:「名前はジャンという。多国語を話せるから、君たちの話しやすい言葉で構わないよ」
・組織について:「世界滅亡を避けるために最近設立したんだ。リーダーがその方法を知っていて、教えてくれたんだ。あまり信じてもらえないけど……設立を急いでいたから正式な名前は決めていないが、人類保護組織、もしくは単に組織と呼ばれている」
・リーダーについて:「滅亡を回避するために色々準備してくれているようで、あまり本拠地に現れないけど、知識が豊富で賢い人だよ。名前はカルロという」
・回避方法について:「祈りを捧げるんだ。本拠地に残って神様に祈りを捧げていくと、数日経ったら悪夢を見なくなったよ。本拠地は神様の力に守られているから安全なんだ」
※「数日」で見なくなるので、探索者たちは最後の日でも悪夢を見ることになる。
※ジャンは本心からリーダーを信用しているため、〈心理学〉に成功しても嘘をついていないとわかる結果になる。また、探索者が組織の本拠地へ向かわなければ実質シナリオクリアが不可能になるため、KPはなるべくジャンを善意のNPCとして演じて、探索者に過度に怪しまれないように本拠地へ誘導してください。
ジャンは探索者たちに「世界滅亡がいつ来てもおかしくないから、安全が確認できるまで本拠地に留まるほうがいい。あまり離れるといつ危険が迫るかわからないから」と説明し、組織の本拠地へ案内してくれる。荷物を持っていきたい、もしくはまだ見に行きたい場所がある答えるのなら、「またここで待ってるよ」と時間を決めて見送ってくれる。また、組織へ参加したいと表明したのが4日目なら、「案外滅亡の時刻はもう遠くないかもしれないから、なるべく早いほうがいいよ」と促すといい。
組織へ向かう場合、【人類保護組織】の項目に移行してください。
このイベントが終わると次の時間帯に進むため、3回目の行動(夕方)で大運河に来た場合ジャンはすぐに探索者たちを本拠地まで連れて行かない代わりに、「君たちを迎える準備をしておくから、明日の9時にここに来てください。その時また案内しよう」と提案する。この場合、翌日の最初の時間帯(朝)に教団へ向かい、そのまま【人類保護組織】の項目に移行してください。ただしこれが4日目(最終日)である場合、KPの裁量でこのまま組織へ向かっても構わない。
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石造りの橋は16世紀に建てられたもので、カナルグランデ大運河にかかる4つの橋の中で一番古いものである。橋の上には歩道が3本あり、2本は欄干に沿って敷かれているため、大運河の風景を眺めることができるし、中央歩道の両側には店が立ち並んでいる。近くに露店やレストランもあり、いつもお買い物を楽しむ観光客で賑わっている。午前中は近くの市場も開いており、新鮮な食材を購入することができる。
○イベント:失踪した警官
観光の途中、20代前半に見える女性が一人、一枚の写真を手に訪ねてくる。彼女の話を理解するためには、〈英語〉×3もしくは〈イタリア語〉×3に成功する必要がある。
彼女は探索者たちに写真を見せながら、「この人を見かけませんでしたか?」と尋ねる。写真に映っているのは20代半ばぐらいのヨーロッパ人の男性で、警官の制服を着ている。女性が言うには、写真の男性の名前は「レオ」、自分の兄であり、(シナリオ開始の3日前に)何かの事件を捜査している途中消息不明となった。女性は警察にも連絡したけど、未だに見つかっていない。もし見かけたら教えてほしい、と連絡先を教えてくれる。
捜査している事件については確信を持たないが、「失踪事件かも…?」と話す。一週間ぐらい前から、ヴェネツィアンでも観光客でも関係なく失踪事件が起きているらしいとのこと。詳細は警察関係者ではないためわからない。
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ヴェネツィア本島の北に位置する離島で、本島から船を乗れば30分以内に着く距離。昔からヴェネツィアングラスの産地として有名で、工房を訪れて制作過程を見学する観光客も多い。その歴史を語るガラス博物館もここにある。面白い形をしたガラス細工を売っている店もあって、お土産にはちょうどいいだろう。
○イベント:水位上昇の観測
一通り観光したら、探索者たちに〈目星〉を振ってもらう。成功で、海沿いの歩道で、海を指さしながら話し込んでいる二人組を発見する。
〈イタリア語〉×3に成功すれば、「最近」「海」「水位」「上昇」「続いている」などの単語を聞き取れる。もし出目が〈イタリア語〉の数値以下であれば、彼らが話している内容は以下の通りだとわかる:「海の水位上昇に異常が観測されるようになって一週間が過ぎてしまったが、今だに理由がわからない。こうして毎日研究しているものの、解決法を見つける見込みもない。このままだと、いずれヴェネツィアは沈んでしまうかもしれない」。
もし探索者が1日目の新聞の内容を知っていれば、この状況を「予言」に結び付けるのだろう。ヴェネツィアが沈めば、自分たちも逃げられない。「予言」が現実になる可能性がある、という発想に至った探索者はSANチェック、0/1D2。
※このイベントの情報は実質2日目の新聞と同じようなもののため、先に新聞を読んで、且つSANチェックをした探索者なら、ここのSANチェックは免除とする。
※このイベント以降、海辺に訪れる機会があれば探索者たちは実際に水位がいつでも地面ぎりぎりまで上昇していることを確認できる。また、この情報を知る前に海辺を訪れたことがある場合(1日目に町を散策したなど)、〈アイデア〉成功で水位が上昇している事実を思い出せる。
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ヴェネツィア本島の北に位置する離島で、本島から船を乗れば40分ほどで着く距離。昔からレースが特産品で、レース学校の建物を転用して、博物館も建設されている。色とりどりの建物が並ぶ特徴的な街並みは必見。サン・マルティーノ教会の斜塔も有名な観光スポットになっている。
○イベント:アックア・アルタ
探索者たちが本島へ戻ろうとするとき、〈幸運〉を振らせてください。半数以上が失敗の場合、海水が流れ込み、町が浸水する。教会や店などに入って一時退避すれば、ダメージを負うことはないだろう。水は30分ぐらいで引くので、少し待てば次の場所へ向かうことができる(行動回数に影響なし)。
待っている間、同じく退避している現地の住民が探索者たちに話かける。内容を理解するのに、〈英語〉×3または〈イタリア語〉×3に成功する必要がある。また、浸水が発生していなくても、通りかかる店の店主が観光客に説明している内容を聞き取ったことにしていい(理解するには同じく〈言語〉×3のロールが必要)。
住民から聞いた話:一週間前ぐらいから、海の水位が不自然なほどに頻繁に上昇しては浸水を起こしているので、とても困っている(店主なら営業妨害だと愚痴をこぼすだろう)。アックア・アルタとも違うし、原因にも心当たりがないから、町に何か異変でも起きているのかと不安のようだ。探索者たちも外出のときに気を付けたほうがいいとアドバイスする。
アックア・アルタについては、住民に聞けば教えてくれるし、〈知識〉の半分もしくは〈天文学〉成功で同じく以下の情報が得られる:アックア・アルタとは、アドリア海北部で定期的に発生する異常潮位現象だ。潮の満ち引きは月に影響されるし、発生しやすい時期は10~3月である。
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ヴェネツィア本島の南に位置する離島で、本島から船を乗れば1時間ほどで着く距離。ヴェネツィア国際映画祭の開催地であり、近くに公共ビーチもあり、泳いだり日光浴もできる。ヴェネツィアではちょっぴり珍しい、バスも走っている。
○イベント:勧誘ポスター
船乗り場からビーチへ向かう道中、探索者たちは黒いポスターを見つける。〈幸運〉を振らせて、一人でも成功すれば日本語(あるいは探索者の母国語)で書かれたポスターを見つける(失敗しても、必ず英語とイタリア語のポスターはあるが、読むのに〈英語〉×3、または〈イタリア語〉×3に成功する必要がある)。
ポスターにはまるで何かの紋章のように、正八角形の枠の中に一つ水滴の形をした図案が描かれている。また、白い文字で以下の文章が綴られている:
「間もなく世界は終わりを迎える。その事実を我々は夢を通じて知らせてもらっている。
この夢は警告であり、我々を助けようとするメッセージでもあるのだ。
世界滅亡から身を守るために、私たちの力を集うべきだ。
人類の未来は君にかかっている!私たちと一緒に生き残ろう!」
そして、終末の日が来ても生き残る方法がある、賛同し協力してくれる方は、ポスターのマークを目印にスタッフに連絡をください、とも書かれている。スタッフは交代で運河沿いで待っているようだ。
ポスターを読んだ探索者は〈アイデア〉成功で、文章にある「夢」を自分の見た悪夢に結び付ける。同時に、「世界は終わりを迎える」という一文は真実を示しているかもしれないと、なぜか予感する。SANチェック、0/1。
※組織は観光客も引き入れたいため、多言語のポスターを用意した。また、マークはわかりやすくメンバーだと人々に認識してもらうために組織の創立者たちがデザインしたものであり、クトゥルフ神話関連なものではない。
――― × ――― × ――― × ―――
ジャンについていくと、彼は狭い路地を通ってとある建物の裏口まで探索者たちを連れていく。ドアノブに手をかけて扉を開くと、「ここが組織の本拠地の入り口だよ。どうぞお先に」と入るように探索者たちを促す。
探索者が「扉」をくぐると、目の前の景色が一瞬歪んで見えて、眩暈を覚える。SANを1点、MPを1点減らしてください。
※扉の位置に「門の創造」という呪文で作られた門があり、通るたびに(門を通って本拠地から出るときも)コストとしてMPとSANを1点ずつ支払う必要がある。
眩暈が収まると、「扉の向こう」が見えてくる。全員横並びになっても余裕のある広さの長い廊下が目に入り、その突き当りには両開きの大きな扉が見える。廊下の壁はコンクリート製で、両側ともたくさんの扉がついている。ただ突き当りの扉に比べて、廊下のは簡素な作りになっていて、全部ではないがいくつかの扉には文字が書かれたプレートがかかってある。
○ここで〈アイデア〉を振らせてください。成功で、この空間は外よりもだいぶひんやりしていて、また、門の外から見た建物より明らかに数倍も広いと気づく。「扉をくぐった」だけではこうはならないだろうと、探索者は違和感を覚える。
アイデアの結果についてジャンに聞くのなら、「これも神様の不思議な力がなす技らしい。詳しいことはリーダーに聞かないとうまく説明できないけど……」と答える。
※「門」はヴェネツィアの離島の地下に繋がっているため、探索者たちが門をくぐった時点で転送されたことになる。
※地下にあるため、本拠地に電波が届かず、インターネットにも繋がらない。
本拠地に入ったら、ジャンは探索者たちを連れて廊下を歩く。【祈りの儀式】へ進んでください。
――― × ――― × ――― × ―――
どこからともなく、鐘の音が本拠地に響き渡る。「ちょうどよかった、これは祈りの儀式が始まる合図だね。まずは礼拝堂まで案内しよう」とジャンが説明して、探索者たちを連れて廊下を進んでいく。目指すのは、突き当りにある両開きの扉だ。きれいに磨かれた木製の扉には波が揺蕩う模様や、組織のマーク(正八角形の枠の中に水滴)が彫刻されている。
探索者たちが儀式について聞くのなら、「名前の通り、神様に祈りを捧げるのだよ」とジャンが答える。
「作法とか気にしなくていいんだ。『神様どうか守ってください』と念じながら、祈りの言葉を復唱すれば、祈りは届けられるよ」
話しながらジャンは両開き扉を開ける。扉の向こうには組織のメンバーだと思われる人が50人ほど集まっていて、その人だかりの向こう、部屋の奥には床が一段高くなっているエリアがあって、布がかぶせられた何かがそこに置かれている。
探索者たちが礼拝堂に入ればジャンは扉を閉める。その直後、司祭のような服装を着た一人の男性が、布がかぶったものに近づくと思いっきり布を引っ張り、その下にあるものが姿を現す。
それは1メートルほどの高さの石像だった。タコのような頭を持ち、顔から無数の触腕を生やし、体は鱗に覆われていて、四肢にはかぎ爪がついている。そしてその背にコウモリのような翼が生えているのが目に入るだろう。まさに「邪神」と称されるべき姿である。
悍ましい石像を見てしまった探索者たちはSANチェック、1D6/1D20。また、初めて石像を見た探索者は〈クトゥルフ神話〉を2%獲得する。
このSANチェックおいて、通常とは異なるが、KPは以下の処理を行ってください:
探索者が一時的狂気、または不定の狂気に陥った場合、狂気の種類を「邪神を盲信する」とする。症状として、目の前の「神」は自分たちを救ってくれると信じて疑わない、祭司の唱える呪文を違和感なく復唱する。
詳細は後述するが、一時的狂気の場合は儀式が終わるまで持続することになる。不定の狂気の場合でも、現在の時間帯が終われば一時的に解除されるが、シナリオ後にも継続するため、持続期間のロールを行ってください。
※石像はクトゥルフを模したものであり、実際に目撃したときのSANチェックよりは数値を軽減している。また、石像は探索者やほかの信者から吸い取ったMPを貯蔵するための容器として使われている。
石像の状態を確認して、司祭の男は声高らかに呪文を唱え始める。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん 」
「いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!」
その呪文を聞いた探索者たちは眩暈を感じて、全員MP-3。
また、発狂した探索者はこれらの呪文を復唱する。自分を制御できず、他のメンバーとともに神に祈りを捧げるこの儀式は、このまま15分ほど続いてしまう。その終わりを告げるのは、司祭の男の言葉だった。
「今日も我らの神様に、皆さんの祈りが届けられたのでしょう。守っていただけることに感謝を忘れず、明日も同じ時刻にいらしてください」
そう言って再び石像に布をかぶせると、司祭の男は礼拝堂から出ていく。他のメンバーも続いて出ていくだろう。
一時的狂気に陥った探索者は正気に戻る。
不定の狂気に陥った探索者は、儀式が終わってもうまく思考することができず、ぼうっとしてしまう。発狂していない探索者に〈精神分析〉をしてもらえれば正気に戻ることができる(次の発狂、または次の「祈りの儀式」までは正気でいられる)。失敗した場合、現在の時間帯が終わるまで探索や技能が必要とする行動ができなくなる。自主的に行動できないが、歩くや座るなどの動作は他人が促せばできる。
ジャンは発狂した探索者に対して、「(初めての)儀式で疲れたのかな?君の部屋まで案内するから、少し休んだほうがいいかも」と部屋まで送り届けてくれる。
初めての儀式で全員が発狂した場合、【本拠地案内】は次の時間帯にて行う。もし発狂していない探索者の希望があれば、一旦休憩にして次の時間帯で改めて全員を案内しても構わない。時間経過については【本拠地探索】の項目もご参照ください。
※初めて本拠地に入るのが最終日の夕方(3回目の行動)の場合、KPの判断で発狂時間を最低1時間までに短縮しても構わない。
発狂した探索者を対象に〈精神分析〉を試みることができる。
もしリアルト橋で「レオ」の写真を見せてもらった場合、組織のメンバーが礼拝堂から出ていくときに〈目星〉が振れる。成功で、失踪した警察官「レオ」に似た人物をその中から発見できる。ただし、その人はすぐに部屋から出て行ってしまい、見失ってしまう。
その後、ジャンが本拠地を案内してくれる。【本拠地案内】へ進んでください。
※この儀式は毎日、初回と同じ時間帯に行われる。2回目以降の参加で、石像を見たSANチェックは(どちらかというと儀式を行ったせいで)免除にならないが、「恐ろしさに慣れる」ルール(ルルブP88)を適用してもいい。また2回目以降、時間が来ても出席しない場合ジャンが迎えに来てくれる。それでも拒否する場合、ジャンに怪しまれて、彼から他のメンバーに報告される。監視の目が増えるので、本拠地内の探索で技能が必要なものにはマイナス補正を付けても構わない(-20ぐらいが妥当だろう)。
――― × ――― × ――― × ―――
初めての儀式のあと、「僕たちの本拠地を案内しようか」とジャンは探索者たちに本拠地内の施設を紹介する。
ジャンはまず、本拠地に最初に入ったときの一番近い扉へ案内してくれる。扉には「Personale/Staff」と書かれたプレートがかかっている。
○〈英語〉×3、〈イタリア語〉×3のどちらかに成功すれば、「スタッフ、職員」という意味だと分かる。どうやらここは職員室のようだ。
中には資料棚が一つに机が一つだけ置いてあって、飾り気のない簡素な部屋になっている。机の後ろに男性が一人座っていて、ジャンが彼と二、三の言葉を交わすと、探索者たちに向かって「名前を教えてほしい」と聞く。探索者たちが名乗れば、ジャンは男性から新品のドアプレートをもらって、数字を書いてから探索者たちの名前をローマ字表記で書いてくれる(数字は部屋番号なので、30前後の番号を適当に使って構わない。また、プレート一つに名前が二つまでなので、探索者が3人以上いれば男性は複数のプレートを用意してくれる)。
「次は君たちの部屋まで案内しよう」と、ジャンは部屋から出て、探索者たちを連れて廊下を歩いていく。途中から、両側の扉のプレートに先ほどジャンが書いた物と同じように、番号と名前が書いてあるのに気づく。番号は奥へ行くほど大きいので、部屋番号だと気づいてもいい。
○リアルト橋で警官「レオ」の話を聞いた場合、〈目星〉が振れる。成功で、とある扉のプレートに「22 Leo」と書かれていることに気づく。
○部屋を訪ねたいと探索者がジャンに相談する場合、(祈りの時間以外は)部屋の訪問は部屋主の同意があればできると答える。
プレートのない扉の前にたどり着くと、ジャンは先ほど書いたドアプレートを扉にかけてから、探索者の部屋だと紹介してくれる(二部屋の場合は廊下の両側、向かい合うように配置される)。「案内が終わったらここに戻ってゆっくりするといいよ」とだけ言って、中には入らず案内を続ける。
ジャンは次に、「Biblioteca/Library」と書かれたプレートの扉の前に足を止める。「ここは図書室で、神様に関する資料や、暇つぶしになる本もあると思うよ。この中の本は自由に読んでもらって構わないけど、持ち出さないようにね」と探索者に告げる。
○〈英語〉×3、〈イタリア語〉×3成功でプレートの意味が「図書館」だとわかるが、ジャンが解説してくれるので省いても問題はない。
図書館から離れるとまた少し歩いて、次に向かう扉は「Mensa/Canteen」のプレートが書かれている。「ここは食堂だよ。朝の8時から夜の9時まで食事ができるね。中にいるスタッフに注文すれば大丈夫だよ」と説明する。
○〈英語〉×3、〈イタリア語〉×3成功でプレートの意味が「食堂」だとわかるが、ここもジャンが解説してくれるので省いていい。
その後、廊下の突き当りにある両開きの扉まで探索者を連れていく。扉にはプレートがかかっていないが、きれいに磨かれた木製の扉には波が揺蕩う模様や、組織のマーク(正八角形の枠の中に水滴)が彫刻されている。材質も他の扉より上質に見える。
「ここはご存知の通り礼拝堂だね。毎日同じ時間にさっきの儀式を行うから、明日以降も参加してくださいね。でも、儀式の時間以外では勝手に入らないようにね」とジャンが話す。
また、廊下の左側にある、礼拝堂に一番近い扉へも案内してくれる。こちらにもプレートがかかっていないが、ジャンは以下のように説明してくれる。
「リーダーはいらっしゃらない時間も多いけど、こちらが彼の私室だよ。リーダーは神様と直接交信することもできるから、守ってもらえるように交渉もしてくれてるんだよ。できるだけ彼の邪魔にならないように、あまりこちらでは騒がないようにね」
「以上で案内は終わりだよ。何か問題があればいつでも聞いてくれて大丈夫だからね」と、最後にジャンは自分の部屋の位置を探索者たちに教える。以降、探索者たちは本拠地内で自由に行動できる。
本拠地内の探索については、【本拠地探索】を参照してください。
――― × ――― × ――― × ―――
本拠地に入った以降、祈りの儀式の時間以外は自由に行動できる。探索に関しては、一部屋を調べたら30分が経過するのが妥当だろう。部屋間の移動は時間経過なしとする。ただし探索の方法によって、KPが所要時間を増やしても構わない。
祈りの儀式は探索者が初めて本拠地に訪れた時間帯によって変更する。朝の時間帯なら毎日9時、昼の時間帯なら毎日の正午、夕方の時間帯なら毎日15時に行う。呪文を唱える時間は15分ほどだが、メンバーが集まったり移動したりする時間なども含めて、終了時は30分経過したとする。また、【本拠地案内】の所要時間も30分とする。つまり探索者が自由行動できるのは本拠地に入って一時間後からになる。
探索は4日目の深夜まで行えるが、日付が変わった時点で礼拝堂の石像を破壊できなかったら、【END D:クトゥルフの呼び声】へ。
※タイムリミットを明確に提示するものはシナリオ内にはないが、4日目のうちに事態を解決できなければ、5日目の帰りの飛行機に間に合わなくなることをPLに教えておくといいだろう。
※日を跨いで調査する場合、適度な睡眠を取らなかった探索者に補正を与えてもいい(例:徹夜した探索者の探索技能に-20の補正、など)。
※本拠地の門はコストさえ払えば通ることができる。探索者たちが望めば、外から警察を連れてきて組織のメンバーを全員逮捕させることもできるが、石像を破壊できていなければ夜に悪夢は見続けるし、4日目の深夜になれば必ず【END D:クトゥルフの呼び声】に到達することになる。4日目深夜までは、組織が瓦解されたとしても本拠地探索を行うことができる(無人になっているが、現場は保存されている)。
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簡素な部屋の中にはベッドが二つと、机と二脚の椅子が置いてある。机にはメモやペンといった文房具が置いてあって、自由に使用できる。壁際に小さな棚があるので探索者たちの私物を置くことができるが、他に目ぼしい物はない。
また、各部屋にトイレ、洗面所とシャワーが(同じ小部屋に)ある。ホテルには及ばないが、日常生活に支障のない作りになっている。
小さな通風口はあるが人が出入りできるサイズではなく、窓もない。出入口は入ってきた扉のみで、変わったところは見当たらない。
※ここには特に情報がない。PLが尋ねたら直接そう伝えても構わない。
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入る前に探索者全員に〈幸運〉を振らせる。一人でも成功すれば、職員が席を外していることにしていい。
職員がいても中に入ることは可能だが、室内を調べるときに-20の補正がつく。また、部屋の物は持ち出し不可、キャビネットの中身も調べられない(職員に阻止される)。
※シナリオの進行によってKPが条件を調整してもいい。
中は案内のときに見た通り、資料棚が一つと、机と椅子が一つずつだけ置いてある。
○資料棚
〈目星〉成功で、『メンバー名簿』を発見する。
中を見れば、50ほどの名前がローマ字で書かれている。一番最初、「リーダー」の欄には「カルロ・パボーニ」と書かれていて、数行下に「ジャン」の名前を見つける。また、最後に探索者たちの名前が書いてある。
リアルト橋でレオの妹から話を聞いた場合、このリストに対してさらに〈目星〉が振れる。成功で、42番のメンバーの名前が「レオ」だと気づく。
○机
事務机のようなデザインで、足元が隠されて、扉側からだと机の下が見えない。
回り込んで調べる、もしくは〈目星〉成功で、机の下にあるキャビネットを発見する。
○キャビネット
引き出しが3つある。どれも鍵がかかっていない。
上の引き出し:事務用品や、未使用の扉プレートが収納されている。
真ん中の引き出し:箱があって、中にいくつか鍵が置いてある。「リーダー私室の鍵」と「礼拝堂の鍵」は探したいと宣言すれば手に入れられる(宣言なしの場合、〈目星〉成功でも気づくことができる)。
※一応キーホルダーに部屋名が書いてあるので〈イタリア語〉×3を振らせるのが適切だが、ここに限って省略しても構わない。
※他には(夜に施錠するために)図書室や食堂の鍵なども置いてある。
下の引き出し:工具箱が置いてある。中にはハンマー、レンチ、ドライバーなど一般的な工具箱に入っている道具がある。
※武器として使用する場合、ルルブの「武器の表」(P70)にある「小さい棍棒」と同様に扱ってください。
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壁際や室内にいくつもの本棚が置いてあり、20人ほどが座れる読書スペースも併設されている。本棚には主にイタリア語と英語の本がぎっしりと詰め込まれており、まるで図書館のように分類され、収納されている。また、新聞ラックも一つだけあって、ここ数日の新聞が読める。
○本棚
〈目星〉もしくは〈図書館〉に成功すれば、革の手帳を一冊見つけられる。中に英語で書かれた手稿の写真が何枚も挟んでいて、手帳自体にはその翻訳らしきイタリア語の文章が書かれている。〈英語〉、もしくは〈イタリア語〉(倍数ではなくそのままの値)に成功すれば、【革の手帳】の内容を読み取れる。失敗の場合、余分に1時間を使って解読できることとする。
手帳を読んで、冒涜的な知識を手に入れた探索者はSANチェック、1D3/1D6。また、〈クトゥルフ神話〉技能を5%獲得する。
手帳の内容を知った探索者は〈アイデア〉が振れる。成功で、ここ数日見た悪夢は「神」や呪文によるものであり、神様に守られているところか、夢で見せられた「世界の滅び」は人為的に引き起こされようとしていることに気づく。
また、〈目星〉に成功できたら、最後のページの隅に小さく「カルロ」という名前がローマ字で書かれてあることに気づく。
※探索者は救われるために組織に参加したため、ここではっきりと組織が怪しいことに気づかせて、リーダーの部屋を探索する理由をPCに与えるべき。そのため、PLが事実に気づけば、〈アイデア〉ロールを免除し、PCへ反映してもらっていい。
※手帳の内容はカルロが手に入れた《ルルイエ異本》(複写・英語訳)の一部である。手帳は彼の私物だが、他のメンバーに間違われて図書室に「戻された」。
【革の手帳】
海底に沈められた「ルルイエ」に封印された「大いなるクトゥルフ」、かの神は星辰が揃って、ルルイエが浮上するまで眠り続けている。神が目覚めれば、その眷属と共に再び世界を支配するであろう。
また、〈クトゥルフとの接触〉の呪文をここに書き記す。夢の中で、神が導いてくれるだろう。
かの神が見せてくれるのは古い世界の終焉を示す夢。しかし恐れることはない。これは新たな世界の誕生でもあるからだ。
(以下、クトゥルフ及びその眷属についての説明が書き記されているが、解読するには何日もかかる)
○新聞ラック
旅行初日から当日までの、イタリア語と英語の新聞がある。探索者が調べるのなら、【新聞】の項目にある情報を(適切な言語ロールの後に)開示する。図書室の探索時間内なら余分に時間を消費せずに読むことができる。
本拠地には電波が届かないため、新聞の内容を知りたい場合はここでしか手に入らない。
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テーブルや椅子が並べられていて、料理を受け取るカウンターも設置されている。朝の8時から夜の9時まで、カウンターには職員がいて、注文の受け付けや、完成した料理を渡してくれる(時刻は探索者のやりやすいように調整しても構わない)。
メニューのレパートリーは多いとは言えないが、数種類のパスタやピッツァを提供している。また、炭酸水や普通の水、紅茶やコーヒーも注文できる。レストランには劣るが、味も悪くはない。
ここには特に情報はないが、探索者たちが12時間以上食わず飲まずしていれば、適切な空腹補正を与えてもいい(例:全技能に-20の補正)。
また、聞き込みしようとしても特に手に入れる情報はない。組織のメンバーはみんな「神」を信じているとわかるぐらいだろう。
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※探索者の対応によってエンディングの展開が少し変わるが、シナリオをクリアするためにレオに会うことも、レオに協力することも必須ではない。
鍵がかかっておらず、外から扉を開けられる。もしノックをすれば、中から男性の返事が聞こえて、扉を開けてくれるだろう。
中にいるのはカジュアルな格好をしている20代半ばの男性で、顔立ちからしてヨーロッパ人だと推測できる。失踪した警官の写真を見た探索者であれば、服装こそ違うが、彼が探されている「レオ」だとわかる。〈英語〉×3もしくは〈イタリア語〉×3のロールに成功すれば彼と会話ができる。
彼の失踪について尋ねるのなら、「俺はずっとここにいる、はずだが……」「警察?知らないぞ…?」「妹……俺の……?」「神に祈りを捧げるのが日常みたいなものだから……」と、どこか心ここにあらずの様子で答える。
※不定の狂気による健忘症になっている。また、祈りの儀式での発狂と同じように邪神を妄信する症状も出ている(発狂した探索者がいれば同じ症状だと確信してもいい)。
〈精神分析〉に成功すれば彼の発狂状態を解除することができる(シナリオが終わるまで解除したままにしていい)。
正気に戻ったレオは任務を思い出し、探索者を室内に招いて事情を話してくれる。自分の事については「町の失踪事件を調べているうちに、この組織が関わっている可能性が高いと気づいたから、組織に参加する振りをして潜入したのだが、祈りの儀式を参加したあとの記憶が曖昧だ」と話す。しかし失踪者の何人かを本拠地で見かけたことがあったため、レオはこれから警察に連絡を試みると教えてくれる。
「もし本当に組織のことを信じているのなら、俺は何も言うことはないが……そうでなければ、俺に協力してくれると助かる」と彼は探索者に協力を求める。
○レオに協力する
レオから「もし証拠になるものがあれば持ってきてほしいが、自分の安全を優先してくれ」と言われる。また、「民間人に任せてしまってすまない」とも言われる。レオは自分の端末から警察に連絡を試みるため探索者には同行しない。
○レオに協力しない
彼を邪魔しない場合特に何も起こらない。レオを止めることももちろん可能である(KPの判断で〈組みつき〉などの技能ロール、または拘束に使う道具や方法を提示してもらうといい)。失敗した場合、もしくは成功しても見張っていない場合、レオは逃走し、本拠地からいなくなる。
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世界滅亡の悪夢を見て、「神」に祈りを捧げば救われると信じている人たちの部屋。一人、もしくは二人で一部屋を使っている。彼らの信仰は発狂によるものではないので、交渉しても意味がない。
日用品の貸し借りぐらいはできるが(場合によっては〈幸運〉を振らせる)、武器類は所持していない。
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彫刻された扉には鍵穴がついている。祈りの儀式のときはスタッフがあらかじめ開けおくのだが、探索者たちが潜入する場合、職員室にある鍵を取りに行く、もしくは〈鍵開け〉に成功しなければならない(団員は頻繁に廊下でうろついているわけでもないので、〈忍び歩き〉などのロールは省略する)。
中は100人ほど収容できる広い空間となっている。窓はなく、壁も装飾されていないが、等間隔に照明が設置されている。照明のスイッチを探すなら、ロールなしで扉の近くに見つけられる。
家具などは見当たらないが、部屋の奥には床が一段高くなっているエリアがあって、布がかぶせられている何かがそこに置かれている。祈りの儀式を参加したため探索者はそれが悍ましい石像であるとわかる。布を外し石像を見る場合、1D6/1D20のSANチェックが発生し、初めて石像を見た探索者がいれば〈クトゥルフ神話〉を2%獲得する。
この石像を破壊しようとする場合、【クライマックス】に進んでください。
※祈りの儀式の途中ではないため、ここで発狂した場合は通常通りに処理してください。
※石像の詳細は【祈りの儀式】を参照してください。また、このSANチェックにも「恐ろしさに慣れる」ルール(ルルブP88)を適用していい。
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礼拝堂で呪文「門の発見」を使えば、壁に設置された照明のうち、2つの間に見えない「門」があることに気づく。コストとしてSANを1点、MPを1点消費すれば、門を通ることができる(帰るときも支払う必要がある)。
部屋の中には机と椅子があるのみ。リーダーことカルロが、邪神との接触を試みるため、または資料を研究するときに集中するためだけの部屋だからだ。
朝の8時から深夜1時の間に部屋に入れば、カルロを見つけられる。石像を破壊する前に突入した場合、「ここは組織のメンバーでも立ち入り禁止だ」と言って彼は探索者たちを追い返そうとする。もし説得しようとしても、カルロは聞く耳を持たない。「この目で神の存在を確かめなければならない。そのためにはどんな犠牲を払っても構わない」と彼は探索者たちを無視するだろう。【リーダーのノート】の内容について尋るのなら、すべて事実だと認める。
探索者たちが引き下がらない、または彼を捕まえようや攻撃しようとする場合、カルロは探索者たちの隙をついて逃走を試みる。戦闘処理になるが、カルロは1ラウンド目に行動せず、2ラウンド目以降自分の順番でDEXが一番高い探索者とDEX対抗ロールを行う。成功すれば、彼はそのまま逃げてしまい、二度と本拠地内に現れない。
※カルロを殺した場合、1/1D6のSANチェックが発生し、探索者たちは殺人罪で逮捕されてしまう。【END C:遠ざかる帰途】をご参照ください。KPは逮捕の可能性を提示しても良い。
【人類保護組織のリーダー・カルロ】
STR 10 CON 13 POW 10 DEX 12
APP 13 SIZ 11 INT 17 EDU 20
HP 12 MP 13 DB 0
技能:レイピア 50%(ダメージ1D6+1)、回避 24%
※基本的に逃げることを優先するが、状況に応じてKPが技能を使用してもいい。彼はレイピアを一本所持している。
※シナリオ開始の時点、カルロが「門の創造(ルルブP289~290)」を使うために消費したPOWは2点で、以上のステータスには反映済み。
――― × ――― × ――― × ―――
探索者たちが石像を破壊すれば、カルロの企みは失敗し、邪神が現れることもない。
礼拝堂に人がいないときに侵入できれば、石像の破壊を試みることができる。
もし石像の布を外した場合、1D6/1D20のSANチェックが発生し、初めて石像を見た探索者がいれば〈クトゥルフ神話〉を2%獲得する。このSANチェックに「恐ろしさに慣れる」ルール(ルルブP88)を適用していい。
石像は動かないので、探索者の攻撃は自動成功になるが、その際隠し部屋(もしくは私室)にいるカルロに気づかれたかどうかを決めるために攻撃技能を振ってもらう。すでにカルロを捕まえた場合、ロールを省略しても構わない。
武器を使って破壊する場合、適切な技能か、〈こぶし〉を振ってもらってもいい。
職員室で見つけた工具を使う場合、4回で石像を破壊できる。もし素手で破壊しようとすれば、〈こぶし〉を10回振る必要があるのと、技能を使用した探索者に一回ごと1D3のダメージが発生する。これを基準に、他の武器に関してはKPの判断で処理してください。
この時、KPは失敗したロールの総数を記録してください。
探索者たちが石像を破壊する前にすでにカルロを捕まえた場合、警察が乗り込む際彼を連行して逮捕することになる。
捕まえていない場合、探索者たちが石像を破壊する際に振った技能ロールの失敗回数が3回以上になったら、攻撃の音を聞いたカルロは呪文「門の創造」を使って新しい門を作り、逃走しようとする。深夜なら自室に、それ以外の時間なら隠し部屋に、「門の発見」で感知できる門が新しく作り出される。
○レオに協力し、且つ【リーダーのノート】の内容をレオに伝えたのなら、「リーダーを逮捕しなければならないが、どこにも見当たらない。心当たりはないか?」と彼に聞かれる(伝えていなければ、黒幕を特定できないため聞かれない)。探索者たちがカルロの居場所を指摘できれば、カルロが「門」を通って逃げる前に警察とともに彼を捕まえることができる(隠し部屋へ向かう場合、出入りの際「門」を使用するコストを支払う必要がある)。その際、カルロとの会話を軽く挟んでも構わない。
※カルロの言い分は【隠し部屋】の項目を参照してください。警察が同伴するため、カルロの逃走ロールはここでは発生しない。
○レオと協力しない場合、探索者たちは警察に連行されるため、自由行動ができない。連行される前に、警察に【リーダーのノート】と「門の発見」の呪文を提出できなかった場合、カルロはそのまま逃走する。提出した場合、探索者全員で〈幸運〉ロールを振って、半数以上が成功した場合のみ、カルロが逃げられる前に警察が彼を発見できたとする。
――― × ――― × ――― × ―――
警官レオと協力し、石像を破壊した→【END A:穏やかな海】
警官レオと協力せず、石像を破壊した→【END B:旅の終わり】
リーダーカルロを殺し、石像を破壊した→【END C:遠ざかる帰途】
石像を破壊できなかった→【END D:クトゥルフの呼び声】
※カルロが死亡や捕縛されていても、石像を破壊できなければEND Dになる。
探索者たちは組織の本拠地を後にする。警察によると、本拠地はヴェネツィア本島より少し離れた、人口がかなり少ない離島の地下にあるようで、警察はレオが送った信号で場所を特定したようだ。警官たちが開けてくれた地上へ繋がる本当の入り口から外に出ると、船が本島まで探索者たちを運ぶ。そのまま警察署に向かい事情聴取をされるが、レオの口添えもあってすぐに開放されるだろう。
水位上昇の問題や、人々を苛む悪夢もなくなり、町に平和が戻ったと実感できるだろう。トラブルもあったが、ヴェネツィア観光もできた探索者たちは、予定通り5日目に帰国することとなった(4日目以前に事件を解決した場合、残りの時間を使って観光することもできる)。
○カルロを捕まえた場合:彼の研究はすべて処分され、ヴェネツィアを脅かす存在は二度と現れないだろう。……彼と同じ道を辿ろうとする者がいない限りは。
○カルロが逃げた場合:ヴェネツィアの危機は一時的に去った。しかしいつ、どこで彼が再び現れるのかは、誰も知らない。そんな日が来ないことを祈るしかないだろう。
○報酬:
シナリオクリア SAN 2D8
石像を破壊した SAN 1D6
レオに協力した SAN 1D3
カルロを捕まえた SAN 1D3
〈英語〉もしくは〈イタリア語〉の成長ロールを行える(どちらかを1回)
探索者たちは取り調べを受けるために警察署に連行される。本拠地はヴェネツィア本島より少し離れた、人口がかなり少ない離島の地下にあることを警官が教えてくれる。警官たちが開けてくれた地上へ繋がる本当の入り口から外に出ると、船が本島まで探索者たちを運ぶ。探索者たちの名前が組織の名簿に載っているため、警察署で長時間の取り調べを受けることになるが、なんとか誤解を解け解放されるだろう。
石像を破壊したのが4日目以降の場合、取り調べのせいで帰りの飛行機に間に合わず、改めてチケットを手配する必要がある。
さんざんな目に遭ったけど、なんとか無事に帰途に就くことができた探索者たちはそれぞれの日常へ戻っていくだろう。
○カルロについては【END A:穏やかな海】を参照してください。
○報酬:
シナリオクリア SAN 2D8
石像を破壊した SAN 1D6
カルロを捕まえた SAN 1D3
〈英語〉もしくは〈イタリア語〉の成長ロールを行える(どちらかを1回)
本拠地をくまなく捜査した警察はカルロの死体を発見し、探索者たちは容疑者として本島の警察署まで連行される。やがて探索者たちが犯人である証拠も見つかるだろう。相手が犯罪者とはいえ、人を殺した事実で探索者たちは罪に問われることになる。
ヴェネツィアは滅亡の危機から逃れたが、探索者たちは観光をあきらめるしかないようだ。
○報酬:
石像を破壊した SAN 1D6
※シナリオクリアの定義は人よって違うと思うので、2D8のクリア報酬はKPの判断に任せる。
石像を破壊しないまま4日目が終わり、日付が変わったころに、探索者たちは水の流れる音を耳にする(寝ていた者は起きて構わない)。床を(ホテルにいる場合は窓の外を)見れば浸水していることに気づく。
本拠地にいる場合、ジャンが探しに来て、「扉や壁の隙間から海水が流れ込んでいるみたい。リーダーは本島へ通じる門を通って外へ出て行ったよ、君たちも一緒に行こう」と探索者たちと共に脱出する。門を通れば(SAN1、MP1消費)、海がよく見える場所にたどり着く。ホテルなどにいる場合、窓から海の様子がうかがえる。
夜闇に染まった海に佇む巨影が目に入る。触腕がたくさん生えたタコのような頭に、ウロコに覆われた体は天まで届きそうなほど大きい。背中にある翼がそのシルエットをさらに不気味なものへと変化させた。石像を見た探索者がいれば、目の前の怪物はまさに石像にされた「神」そのものだと気づく。
悍ましい姿を見せた「神」、クトゥルフを目撃した探索者たちはSANチェック、1D10/1D100。
邪神が手を振り上げた途端、海が引き寄せられたように激しく揺れては、町を覆いかぶさるほどの大きな波を作り上げる。迫りくる津波を目にした探索者は、ここ数日見た悪夢を思い出す。まさに今、その光景が現実になったのだ。逃れられない運命を悟った探索者は、ヴェネツィアの町とともに海に飲み込まれてしまう。
○全員ロスト、実質世界滅亡エンドです。
※クトゥルフとの戦闘を想定していないが、ステータスは基本ルルブP213~214に載っているので必要であればご参照ください。
――― × ――― × ――― × ―――
※シナリオ制作の裏話などです、読まなくてもシナリオを回せます。
このシナリオはもともと2016年に私が初めて書いたCoCシナリオだったんですが、当時は国擬人化をテーマにした「ヘタリア」という漫画のなりきり卓にはまっていて、そのキャラを探索者として使えるシナリオを書こうとしました。そうして完成したのがLa Serenissimaの前身です。
「国探索者」Ver.では、PCたちがイタリアで開かれた会議に参加している途中、イタリア(ヴェネチアーノ)が突然苦しみだして倒れてしまいます。その原因を究明するためにPCたちはヴェネツィアへ向かい、調査することになります(自国内の大きな出来事がキャラの体調に直接影響を与えることがある、という設定があるため)。なので現在のシナリオと違い、一般の観光客が入れない場所でも調査のために入ることができました(実際情報収集に国立図書館に向かってもらいました)。また、ヴェネチアーノのために事件を解決するという明確な目的を持って動くことができたので、現在より幾分テンポよく進行できた気がします。
それでも初めてのシナリオだったので、情報の出し方に問題があったり、展開が微妙なところがあったり、テストプレイしているうちに色々改善すべき点も見つけて、これでは修正するまでに2回目は回せないな……と思いつつ作業に着手しましたが、気づけば数年が経ちました…。今はヘタリア卓からもほぼ引退している身だから、修正しても回す機会はなく、いっそうリメイクして一般探索者用のシナリオにしよう、事件を解決するためのギミックも変えたいしね……という経緯で現在の形になりました。
ちなみに舞台をヴェネツィアにしたのは、単純に今まで旅行した町の中で一番好きだからです。水の都に合わせて、ストーリーは海に大きく関わるものにするのはリメイク前のVer.から決まっていたもので、ただ昔は「組織」ではなく「教団」が出てきました(CoCにありがちな)。そのほうが潜入捜査する理由ができるからいいとして、一般探索者向けに改変するにあたって、私がまた行きたい町なので旅行を楽しんでほしい→前半をすべて旅行メインにしようか!となり、教団では怪しすぎて警戒されてしまうな……とテストプレイのときに気づきました。慌ててNPC(ジャン)の設定まで修正して怪しさをなるべく除去しようとした結果が今のシナリオです。だから正直このシナリオの一番回しにくいところはPCを組織に招き入れるところだとは思います……もっと上手に改変できる技術があったらなーと嘆く作者ですので、いい感じに改変を思いついたKPさんがいればぜひそうしてほしいです……!
最後に。ヴェネツィアはいいぞ。(ダイマ)(?)
色々落ち着いたらまた行きたいな……実はシナリオ内に挙げていた観光スポット、ブラーノだけ行き損ねたんです……行きたいです……。