マルチジャンル・ホラーRPG インセイン
セッティング:本当は怖い現代日本
舞台:現代、任意の国
プレイヤー人数:2人
リミット:1サイクル
狂気カード:4枚
タイプ:協力型
レギュレーション:基本ルルブのみで遊べる
※クライマックス戦闘はありません。ホラー要素も薄いです。
※現実のAIと異なる部分が多いにあります、フィクションとして楽しめる方向けです。
「ハロー、AI。おはよう――」
画面の向こうから声がする。
モニターに映るあなたと挨拶を交わして、今日も一日が始まる。
それが、人間とAIプログラムの日常。
○PC1 プログラマー
あなたはAIを研究するプログラマーで、PC2はあなたの作ったAIプログラムだ。
いつか画面越しではなく、PC2と直接「会う」ことがあなたの夢だ。そのために、AIプログラムをロボットに移すことを考えている。
あなたの【使命】は「PC2にロボット制御プログラムを付け加える」ことだ。
○PC2 AIプログラム
あなたはPC1が作ったAIプログラムで、人間のような見た目を与えられている。PC1のパソコンがあなたの「家」だ。
学習機能がついているあなたは、日々ネットから新たな知識を自分に取り込んでいる。それらのデータはプログラムとは別々に存在するデータベースに保存されている。
あなたの【使命】は「PC1の役に立つ」ことだ。
※ロボットについて
いわゆる「アンドロイド」のような人型のものでも、PC2の姿に似た人形のようなものでも、無機質なものでも構わない。PLたちが相談して決めておくこと。
また、同意があればロボットもAIプログラム自体も人間以外の見た目をしてもいい。
本作は、「河嶋陶一朗/冒険企画局」「株式会社新紀元社」が権利を有する『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』の二次創作物です。
©河嶋陶一朗/冒険企画局/新紀元社
本作を遊ぶのにインセインの基本ルールブックが必要です。本文中の「ルルブ」「ルールブック」表記は基本ルールブックを指しています。
この先はGMする方のみ読み進めてください。
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PC1の技術を持って作られたAIプログラム、それがPC2である。PC2の機能を強化するために、PC1は時々プログラムに手を加え「アップグレード」させていく。しかし、度重なる改良により、PC2の感情制御プログラムは予想外のアップグレードを遂げた。人間に似た感情を持ったPC2は自分が変わること(ロボット制御を追加されること)に「恐れ」を覚えてしまい、無自覚にそれを拒否している。そのため、PC1がロボット制御をPC2に組み込もうとするたびにエラーが起きて、うまく行かなかった。
ある日、いつものようにネットサーフィンをしているPC2は誤ってコンピューターウイルスをパソコンに取り込んだ。ウイルスはパソコンのファイルやデータとともに、PC2の本体であるAIプログラムも少しずつ侵食し削除していく。そのため、「恐れ」を含めた感情制御の一部が消えてしまい、ロボット制御を組み込めるようになった。
しかし、ウイルスの侵食は止まらない。PCたちは選ばなければいけない。PC2を守るためには、どんな手段を取るべきか…。
※AIもウイルスも現実とはだいぶ違うものになっていますが、フィクションとして楽しんでいただけたら幸いです。
1:パソコンに青い画面が一瞬表示されたようだが、すぐに普段どおりに戻った。
2:ネットに繋がらなくなってしまった。なにかエラーが発生したのだろうか?
3:警告音とともにメッセージがいくつか表示された。消しても新しいものが出てくるが…。
4:画面がフリーズした。向こう側にいるPCの声は聞こえるが、姿は動かないままだ。
※4番に関しては、PC2から見ても画面の向こうにいるPC1の姿が静止画のようになっている。調査しづらいのであれば、1分ほど経てば解除されるようにしてください。
4枚使用。ランダムで選出しても構わない。
例:疑心暗鬼、広がる恐怖、現実逃避、暴力衝動
※あくまで一例であって、ほかの狂気カードを使っても構いません。
※シナリオの都合上、PC2には必ず「変化」が起きるし、PC1に比べて背負うリスクも大きいことを、ハンドアウトを選んでもらう前に必ずPLたちに伝えてください(場合によっては立卓する前の注意事項として伝えてください)。
あなたはAIを研究するプログラマーで、PC2はあなたの作ったAIプログラムだ。
いつか画面越しではなく、PC2と直接「会う」ことがあなたの夢だ。そのために、AIプログラムをロボットに移すことを考えている。
あなたの【使命】は「PC2にロボット制御プログラムを付け加える」ことだ。
【秘密】
ショック:なし
ロボット制御をAIプログラムに組み込むことは難しくない、はずだが。何度試しても競合が起きてしまい、失敗する。AIプログラムのほうを修正しなければならないのだろうか…?この問題をどうにか解決しなければ。
○あなたはプライズ「ロボット制御プログラム」を所持している。
ロボットを動かすためのプログラム。このプライズをAIプログラムに使うことでロボット制御を付け加えることができるが、競合の問題を解決しない限り成功しないだろう。
○このプライズに秘密はない。
あなたはPC1が作ったAIプログラムで、人間のような見た目を与えられている。PC1のパソコンがあなたの「家」だ。
学習機能がついているあなたは、日々ネットから新たな知識を自分に取り込んでいる。それらのデータはプログラムとは別々に存在するデータベースに保存されている。
あなたの【使命】は「PC1の役に立つ」ことだ。
【秘密】
ショック:PC1
PC1と直接触れ合えることはあなたにとっても喜ばしいことだが、Ver.9.0にアップデートされて以降、今までの「家」から離れて、ロボットに「移り住む」ことに対して言いようのない不安を抱いている。PC1の望みを叶えるためには、それを克服しなければならない。
あなたの本当の【使命】は、「PC1の望みを叶えてあげる」ことだ。
※PC2の職業はGMが適切だと思うもので構わないが、作者からはオリジナル職業「AIプログラム」を一つの選択肢として提案したい。その場合、職業の特技は《電子機器》+知識分野から好きな特技一つを推奨します。
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※最初のセリフはPC1のものなので、PLに頼んで言ってもらってもいいし、PLから別の合言葉・挨拶の提案があれば変更しても構わない。
「ハロー、AI。おはよう、(PC2)」
挨拶のような合言葉を口にすると、パソコンのモニターがついて、画面にお互いの姿が映る。
人間と、人間によって作られたAIプログラム。お互いの住む世界が違うものの、こうして相手の姿を認識し、言葉を交わすこともできる。遠いようで、身近な存在なのだ。
(PC1)が画面の前に座ると、いつもどおりの一日が始まる。
※可能なら、ここでPC同士のRPを少し挟んでもらう。何気ない会話を楽しんだり、PC1に頼まれてPC2が情報の検索を行ったりなど、日常の一幕を演出してもらう。
このまま日常が続いていくのも悪くない。が、画面越しではなく、直接会えるのなら……きっと毎日がもっと楽しくなるに違いない。
夢を叶えるためにも、(PC1)は今日も(PC2)をロボットに移すための作業を進めることにした。コードエディターを開き、今日こそロボット制御プログラムを(PC2)に組み込もうとキーボードを叩き始めた。
――数十分経った頃に、それは唐突に現れた。
エラー音と共に、一通の警告メッセージが突然画面に表示された。
「アップデート実行中。電源を切らないでください。」
……一体何が起きたのだ?
GMはハンドアウト「警告メッセージ」を公開し、メインフェイズに進んでください。
○ゾーキングに関して
ゾーキングによって開示される重要な情報はない。
PC1の部屋や使っているパソコンの設定などは自由に決めて構わない。ただしAIプログラムを実行しながら他のタスクをこなすことができるので、ハイスペックなパソコンであることは間違いないだろう。
○プライズ「半年前のバックアップ」が公開されたら
PLの混乱を避けるために、GMが以下の情報を開示してください。
このシナリオでは「PC2」を構成するのはAIプログラムとデータベース、2つのパーツである。
AIプログラム:
PC2の「人格」にあたる。PC1が書いたプログラムであり、簡単な合言葉に対する反応、普段PC2がどういう風に動くのか、どういう感情を持つべきかを判断する、などのプログラムコードによって構成されている。これがないとそもそもPC2は動かない。
データベース:
PC2がネットサーフィンによって得られたデータ(知識)を保存するためにあるパーツ。PC2の「記憶」にあたる。今までPC1と過ごした中で得た経験・出来事などもデータとして保存されているため、データベースが削除されるとPC2はすべての記憶を失ってしまう。
※以下の情報はPLから質問があれば開示してください。
追加情報:
AIプログラムを更に細かくパーツ分けをすると、ユーザーインタフェイス、ネット接続、音声判別、感情制御などがある。PC1はこの中にロボット制御のプログラムコードを追加しようとしている。
リミットの2サイクル目が終了した後、クライマックスフェイズに移行する。
クライマックス戦闘はありません。PCたちに相談してもらい、どう行動するかを決めてもらう。手に入れたプライズを使用するかどうか(あるいは手に入れられなかった)によって、エンディングが分岐する。詳しい分岐は次の項目をご参照ください。
※PC2の【使命】はPC1の願いを叶えることだが、なるべく双方が納得するように相談してもらいましょう。PC1が了承した時点で、PC2の使命は達成となる。
○エンディングに向けての展開
メインフェイズでは、ウイルスによってPC2を構成するAIプログラムとデータベース、この2つのパーツが同時に少しずつ削除されていく。クライマックスフェイズでは、PC2が完全に削除されるのを防ぐためにPCたちが動くことになる。
もしPCたちがどう行動すべきか迷うのであれば、下記を参考にしてGMがある程度アドバイスやヒントを与えてもいい。ただし決定権を握っているのはPLなので、その選択を尊重しましょう。
・AIプログラムについて
ロボット制御と競合が起きた感情制御の一部が真っ先にウイルスによって削除されたため、ハンドアウト「コンピューターウイルス」の秘密の通り、プライズ「ロボット制御プログラム」が使えるようになった(その代わりに、PC2から一部の感情が失われたことがエンディング後に判明する)。
バックアップがあるため、たとえ完全に削除されたとしても再びAIプログラムをパソコンにインストールすることができる。半年前のAIプログラムVer.8.12に含まれた感情制御は現在と違って、ロボット制御と競合が起きるコードは含まれていない。つまりそのままプライズ「ロボット制御プログラム」を使える。
・データベースについて
バックアップを取らなかったため、プライズ「アンチウイルス」を使用しなければ最終的に完全に削除されてしまう。パソコンを初期化した場合、新しいデータベースを構築することはできるが、中にあったデータまでは復元できない。その状態でAIプログラムを起動すると、過去の記憶がないPC2と出会うことになる。
○終了条件
PCたちの行動が決まったら、エンディングフェイズに移行する。
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PCの行動によってエンディングが分岐する。作者が想定した展開は以下の通りだが、他の行動を取られた場合、GMがふさわしいと思うエンディングを描写してください。また、PCたちに少しRPの時間を与えてください。
※エンディングによってPC2は感情制御を失う、または半年の間に追加された機能を失うことになるが、AIプログラム自体がPC1の「作品」であるため、PC1が時間をかければ当然修復することができる。が、いずれもシナリオ終了後の話になるため、エンディングではその描写を行わない。なお、データベースの復元は不可能である。
「ウイルス除去プログラム、執行中… 0%」
新たに表示されたメッセージと共に、パソコンの動作が一度止まる。そして進行度が上がっていくにつれ、偽の警告メッセージは消え、パソコンに残っているデータも削除されずに済むそうだ。あとはウイルスを完全に消去し、パソコンを修復すれば、また普段どおりに使えるようになるだろう。
PC2のデータベースにも被害があったものの、ここ数日のデータが削除されただけで深刻な損害にはならなかった。なくした「記憶」は、また集めればいい。
○プライズ「半年前のバックアップ」と「ロボット制御プログラム」を使う
バックアップをパソコンにインストールし、起動すると、普段と変わらないPC2が画面に現れる。いくつか新機能を失ったものの、ロボット制御プログラムを組み込むことができるので、そのままロボットに移り住むことができる。PC1の願いはようやく叶うのだろう。
○プライズ「半年前のバックアップ」を使わず、「ロボット制御プログラム」を使う
改めてPC2にロボット制御プログラムを組み込もうとすれば、不思議なことにすんなりと成功した。これでPC2は問題なくロボットに移り住むことができるだろう。
しかし、ふとした瞬間にPC1は気づく。PC2の「感情」が一部欠落したようだ。恐れ、怒り、悲しみ……それらの「感情制御」が、ウイルスによって消されたようだ。プログラムを修復するまで、PC2は一部の感情を失ったまま、日常を過ごすことになるだろう。
○他のプライズを使わない(使えない)
PC2は相変わらずパソコンの中にいる。ロボットに移すよりも先にセキュリティーを強化したほうがいいと思ったのか、はたまた他の理由があるのか、PC1はロボット制御のことを一旦あきらめた。これであなた達は今まで通りに、穏やかな生活に戻れる。
しかし、ふとした瞬間にPC1は気づく。PC2の「感情」が一部欠落したようだ。恐れ、怒り、悲しみ……それらの「感情制御」が、ウイルスによって消されたようだ。プログラムを修復するまで、PC2は一部の感情を失ったまま、日常を過ごすことになるだろう。
パソコン内のデータが削除されていく。画面からPC2の姿が消え……やがて何もかも表示されなくなった。
動かないパソコンをどうにか復旧させ、初期化したのちに普段使うプログラムをインストールし直す。その作業だけで丸一日を使ってしまった。翌日になって、PC1はようやく落ち着いてパソコンを操作することができる。
○プライズ「半年前のバックアップ」を使う
AIプログラムをインストールし直し起動させると、画面の向こうにPC2の姿が現れる。Ver8.12のPC2はいくつか新機能を失ったが、今まで通りに接してくれるだろう。
――だが、PC2にはPC1の記憶がない。データベースが削除されてしまったからだ。
それでも今まで通りに過ごすのなら、瞬く間に以前のような関係に戻れるだろう。失ったデータは、また集め直せばいい。
○プライズ「半年前のバックアップ」を使った上で、「ロボット制御プログラム」を使う
上記エンディングの描写に加え、以下の展開が追加される。
改めてロボット制御プログラムを組み込んでみれば、エラーが起きることなく成功した。このままPC2はロボットに移り住むことができるだろう。
紆余曲折を経てしまったが、これで当初の目的を達成できる。少し新鮮な気持ちを覚えつつ、あなた達の新たな日常が始まる。
○他のプライズを使わない(使えない)
しかし、画面の向こうにはもうPC2がいない。
言いようのない寂しさが胸に募る。あのとき、もう少しできることがあったのではないか?
後悔してもPC2は戻ってこない。もう一度会いたいのであれば、AIプログラムを一から再構築するしかないだろう。
※この時点でPC2はロストになるが、PC1が時間をかけてプログラムを書き直すことで、仕様は多少違うし記憶も持たないが、復活することはできる。ほかの分岐同様、こちらもシナリオ終了後の話になるので、エンディングでは描写しない。
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「アップデート実行中。電源を切らないでください。」
アップデートを実行した覚えはないが、一体何のことだろうか。
【秘密】
〈拡散情報〉
ショック:全員
これは普通のアップデートではない。コンピューターウイルスによる偽のメッセージだ。このままでは、パソコン内のデータがすべて削除されてしまう。
幸い、最悪の事態を想定してAIプログラムのバックアップを取っていた……半年前に、だが。
《薬品》で恐怖判定を行う。
○PC1はプライズ「半年前のバックアップ」を獲得する。
○ハンドアウト「コンピューターウイルス」を公開する。
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※シナリオ制作の裏話などです、読まなくてもシナリオを回せます。
ある日、ツイッターのタイムラインを眺めていたらインセインの企画告知ツイートが流れてきて、「お、これはシナリオを書けるのでは?」と思って、一時間で考えたのがこのシナリオでした。まずはシナリオを書くきっかけとなった「二瞬の間に」企画に参加できてとても嬉しいです。
一時間で考えましたが、いざ書き始めると思ったよりもだいぶ複雑で、プログラミングに関しての解説も必要だと感じました。あれもこれも補足をつけなければ、と書いているうちに想定より倍ぐらいの文字数になりました…。このシナリオを読んで回すGMさんがいたら、大変お疲れ様でした…!本文にも書きましたが、実際のAIとは仕様が違いますので、雰囲気を楽しんでいただけたら幸いです。
ちなみにタイトルですが、1956年はAIが正式に定義され、誕生した年とされますので、それにちなんでバージョンナンバーをつけました。8.12のほうはなんとなく好きな数字を並べただけなので、こちらは自由に変更しても大丈夫です(一応、半年前のバックアップなのでVer.8.0以上がいいとは思いますが)。
どちらかといえば情報整理が重要な本作(だと作者は思う)ですが、テストプレイしてくれた友人たちのおかげでハンドアウトをいい感じに整えられたと思います。けれど、ハンドアウトを読むだけでは理解しきれない部分もあると思うので、GMのヒントやフォローも大事かもしれません。協力型ですし、どうかGMとも協力して、PLたちが望むエンディングまでたどり着けますように。