ゆうやけこやけ
想定人数:2~3人
プレイ時間:テキセ5~7時間
本作は、「神谷涼&清水三毛/インコグ・ラボ」「株式会社アークライト」「株式会社新紀元社」が権利を有する『ふしぎもののけRPG ゆうやけこやけ』の二次創作物です。
©神谷涼&清水三毛/インコグ・ラボ/アークライト/新紀元社
本作を遊ぶのにゆうやけこやけのルールブックが必要です。
この物語で語り手が各場面に使える「ふしぎ」は10点、「想い」も10点です。
外国の友達と一緒に町へやってきた「妖精さん」は、誰にでも見える存在ではなかった。しかし、彼は友達とはぐれてしまった。そんなときに、妖精さんは自分のことが見える変化たちに出会ったのだ。変化たちに協力を頼み、妖精さんは友達のもとへ戻りたいと願った。
※本シナリオはもともと「ヘタリア」なりきり卓のために書いたものを、一般PC向けに書き直したものです。そのため一部設定は「ヘタリア」からインスパイされたものになっています。
へんげ3 けもの1 おとな0 こども2
イギリスからやってきた妖精さん。翼が生えたウサギをデフォルメしたような姿をしている。彼の姿はごく一部の人間にのみに見えるが、変化には普通に認識される。素直で好奇心旺盛でありながら、ちょっぴり泣き虫。
※英語版では、妖精を変化として扱うサプリも出版されているが、このシナリオでは変化ではないとする。
へんげ1 けもの1 おとな5 こども1
妖精さんのお友達で、イギリス人。仕事や旅行でも日本に訪れることが多く、日本語を流暢に話せる。水澄町に別荘(小さな一軒家)を構えていて、町に来るとそこに泊るようにしている。今回妖精さんもついてきたことを知らない。変化たちの存在を見抜くことができ、訪ねてくる変化たちを快く歓迎してくれる。
へんげ1 けもの0 おとな3 こども2
水澄町に住んでいる子供。普通の人には見えないはずの妖精や妖怪が見えるが、周りの人に話しても信じてもらえないため、その事実を隠していた。優しくて大人しい子供で、誠意をもって接すれば仲良くなれるだろう。
甘味処の店主。気さくで噂話好き。たまに町の子供に甘味をおごってくれる。
お土産屋の店主。町の子供たちを孫のように思っていて、たまにお使いを頼む代わりにおもちゃをあげたりする。
街はずれの神社の神主さん。変化たちの正体をなんとなく気づいているが、口に出すことなく、普通の子供に接するように変化たちに応対する。
NPCが多いので、演じ分けやすいように一人称や口調を考えておくといいかもしれない。
必要であれば、商店街の二人のステータスは「雑貨屋のおばちゃん」を参考にしてもいい(おじいちゃんの「大人」はもう少し高めにするといい)。
――― × ――― × ――― × ―――
場所:森の入口
時間:昼
水澄町は自然風景がきれいな、そして静かな町だ。長期休みがあるたび、働くために都会に出ていた人々が戻り、一時的に賑やかになるが、普段はとても穏やかな時間が流れている。
夏がそろそろ終わるころ、そんな平和な町に住んでいるPCたちはある日、町の北に位置する森の入り口に集まっている。ここは人があまり来ない場所なので、変化たちが変身しないで来ることも多いだろう。語り手はこのことを提示して、変化たちの姿を確認してください。
さて、PCたちは遊びに来たのか、はたまた用事があってきたのか……PLの希望に沿って、語り手はここで少しRPしてもらうようにすすめよう。
RPが一通り終わったら、PCたちは森の奥のほうから誰かの泣く声が聞こえる。
目標値が「3」の「へんげ」の判定に成功すれば、声の方向から不思議な力を感じる。それはPCたち変化の力とは少し違うもので、しかし普通の人が持ち得ない類の力だ。また、悪意のある力ではないことがわかるだろう。
ここでPCたちは声が近づいてきた事に気づく。まるで子供のような声は、泣きながら「ここどこ?」「誰かいるの~」など叫んでいるようだ。
○もし声の方へ向かうのなら、そのまま「妖精さん」と出会うのだろう
○もし無視するなら、声がだんだん近づいてきて、やがてPCたちの前に「妖精さん」が姿を現す
PCたちの目の前にあらわれたその「生き物」は、姿はウサギと似ているが、体を覆う毛はミントグリーン色で、背中には小さな翼も生えている。
姿も声も大変可愛らしいが、一目見れば誰もが分かるだろう――それは普通の動物とはもちろん、PCたち変化とも違う存在であることを。
「生き物」はPCたちの登場に驚いてしまうが、すぐに冷静さを取り戻し、助けを求めてくる。PCたちが自己紹介をすれば、彼と会話を進めることができ、以下の情報を得られる:
○自分には名前がなく、人間の友人からは「妖精さん」と呼ばれている
○その友人は休み中、旅行もかねてこの街を訪れたのだが、妖精さん彼に相談せずにこっそり後をつけてきた
○しかし目を離した隙に友人を見失ってしまい、妖精さんは迷子になった
○友人を探すのに協力して欲しい
PCたちが協力するのであれば、妖精さんは友人の特徴を教えてくれる:イギリスという国に住んでいて、金髪碧眼で、やや太い眉毛が目印になるだろう、と。名前はウィリアムという。
もし協力しないのなら、PCたちが移動して一定の時間が経過したあと、妖精さんを再登場させる。まだ友人が見つからないので妖精さんは再びPCたちに助けを求めるだろう。それでも断られたら語り手はセッションを中断(または終了)し、PLたちにシナリオの趣旨を説明してください。
PCたちが協力に了承すれば、妖精さんは「街に出て情報を収集したいな!」と提案する(PLから提案されたらそのまま向かうこともできる)。また、「店がいっぱい並んでるところで見失った」とも教えてくれる。それがPCたちもよく訪れる商店街であることを、PCたちは気づくことができるだろう。
以上で最初の場面を終了する。
――― × ――― × ――― × ―――
場所:街の商店街
時間:昼
PCたちが妖精さんを連れて、その友人を探しに商店街へ向かう。人里に降りるので、語り手はPCたちがどう変身するかの確認を忘れずに。
もしPCたちが妖精さんを隠そうとすれば、「私の姿は普通の人には見えないの」と妖精さんは通行人の目の前で飛び回って、その事実を示してくれるだろう。
商店街はとても静かだ。まだ昼間だというのに、閉まっている店もそれなりにある。どうやらこの時間帯は客が少なく、営業している店は普段から少ないみたいだ。
営業している店の中で、甘味処の店主のおばちゃんと、お土産屋さんの店主のおじいちゃんの二人は手が空いてるようだ。PCたちが話を聞きに行くのなら、二人は以下の情報を教えてくれる。
○一軒目の店にてウィリアムについて尋ねると申し訳なさそうに「知らない」と言われる
○二軒目の店主に聞けば、「金髪の人ならさっき神社の方へ向かったのを見かけた」と教えてくれる
※この情報は店の種類と関係なく、PCたちが向かう順番だけによって決められる。
おばちゃんが店番をしている。PCたちがウィリアムについて尋ねたあと、おばちゃんはそろそろ店じまいだと言って、いったん店の奥に消えるが、すぐ出てきてPCたちを呼び止める。「残り物で申し訳ないけど」と言って、彼女はPCたちに一本ずつ串団子を贈る。
妖精さんは団子を食べたことがないので、興味津々にPCたちにお菓子について色々聞いてくるだろう。
おじいちゃんが暖かく歓迎してくれる。PCたちが情報収集している間に、妖精さんは店でお気に入りのお土産を見つける(川を大事にする町なので、川や水をモチーフとしたアクセサリーなどがいいかもしれない。例:半透明で青いしずくの形をしているペンダント)。
もし店頭でその話をすれば、おじいちゃんが気づいてくれて、「そうじゃのう……ちょうど神社に届けたいものがあるのじゃ、手伝いを頼まれてくれないかのう?」とPCたちに聞く。手伝うPCにはお礼にお気に入りの品を一つくれると約束する。承諾すれば、手紙を神社の神主に届けて欲しいという依頼を受けることになる。
PCから他の店へ行きたいと提案があれば、他の店はすでに営業を終了している、またはその準備に入っていると告げてから、次の目的地へ誘導するといい。
以上で第二の場面を終了する。
――― × ――― × ――― × ―――
場所:町外れの神社
時間:夕方
川沿いの神社に到着したころ、太陽は西に傾き始めた。赤みを帯びた空はまだ夕焼けに染まりきっていないが、時刻はもう夕方だとを教えてくれるだろう。
周りを見れば、家に帰ろうとする人々を見送ることになる。参拝客が一人二人ぐらい残っているが、PCたちが話を聞きにいっても詳しく知らないと答える。
※妖精さんは正樹と会う前にふらっと神社の境内を散歩しにいったので、正樹とPCたちが出会った以降しばらくは登場しない(PCたちも正樹を一般人だと思って妖精さんには話しかけないだろうと想定している)。
本殿の近くにある授与所の前に、少年が一人佇んでいる。もし彼に神主について尋ねるのなら、神主は暫く席を外していて、15分以内には戻ると答える。彼は留守番を頼まれたそうだ。
少年について聞くのなら、彼は正樹と名乗り、神社から見える風景が好きなのでよくここを訪れると教えてくれる。
ウィリアムについて尋ねると(名前でも特徴を伝えても大丈夫)、彼は嬉しそうに「ウィリアムさんだね!さっきここでも会ったよ!」と教えてくれる。どうやら正樹の近所にウィリアムが住んでいる小さな一軒家、もといウィリアムにとっての別荘があるようだ。ウィリアムが年に何回か日本を訪れるが、そのときは別荘に泊るらしい。時間があるときに正樹ともよく遊ぶので、仲が良いそうだ。
正樹に頼めば、ウィリアムの家まで案内してくれるだろう。ただし、「留守番を任されているから、神主さんが戻ってからね」と言われる。
ちょうど正樹との会話が一段落したところで、神主が戻ってくる。PCたちがおじいちゃんの手紙を渡せば、神主はお礼を言って手紙を受け取って目を通す。そのあと、「ちょっと待っててくれないか?」とPCたちに頼んで、授与所から小さな包を持ち出して戻ってくる。それはおじいちゃんに頼まれたもので、「おじいちゃんに届けてもらえないかな?」と聞く。
この依頼を受けるかどうかはPCたちが決めていい。また、正樹に案内を頼んでいた場合、彼も神主の話を聞いているので、「お届け物したあとでも大丈夫だよ」と言ってPCたちと同行する。
会話の合間にPCたちが妖精さんの様子を確認するのなら、近くにいないことに気づいてもいい。そうでなければ、神社を出ようとするとき鳥居の付近にいるのを発見する。どうやら初めて見る神社に興味をもってしまい、あたりをうろうろしていたようだ。
正樹が同行している場合、彼は妖精さんが姿を見せた途端唖然として動かなくなる。彼の視線をたどれば、妖精さんを見つめていることがわかる。PCたちがそれについて尋ねば、彼は一瞬迷ったあと、自分には不思議な存在が見えるという事実を打ち明ける。他の人に視えない存在について話すとみんなに気味悪がられて、遊んでくれなくなるから、あまり人に話したくないし、いつもは隠している。
正樹は、見えない存在について話せる唯一の相手がウィリアムだと教えてくれる。ウィリアムも同じく「視える」人だと知っているので、妖精さんがここにいる理由を正樹に話せば彼は納得してくれる。おじいちゃんと神主の依頼を受けた場合、「なら早く届けて、ウィリアムさんに会いに行かなきゃね!」とPCたちを促すように言うだろう。
以上で第三の場面を終了する。
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場所:(商店街→)住宅街
時間:夕方
PCたちが神主からの依頼受けたのなら、包を届ければおじいちゃんの依頼も達成したことになる。おじいちゃんはお礼を言うと、約束したお土産の品を人数分くれる。正樹が同行している場合は正樹の分も。妖精さんの分はないので、PCの誰かが譲ってあげれば喜んでお礼を言ってくれるだろう。もし妖精さんの分もおじいちゃんからもらいたい場合、RPでも能力を使っても構わないが、PLから具体的な方法を提案してもらう必要がある。
用事が済んだら、正樹がウィリアムの家まで案内してくれる。商店街からそれほど離れていないところに住宅街があって、ウィリアムの家はその端にある。一軒家は生垣に囲まれており、夏の暑さを少し遮ってくれる。避暑にはちょうどいい場所だ。
インターホンを押したり、家の門をノックしてみたりすれば、家からウィリアムが出てくる。妖精さんがついてきたことを彼は知らないので、その姿を見て彼は盛大に驚くだろう。
ウィリアムの容姿は妖精さんに教えてもらった通り、一見して外国人だとわかるが、日本語を流暢に話せるのでPCたちとも問題なく会話ができる。
目標値が「8」の「へんげ」の判定に成功すれば、彼の「視える」力が正樹よりもだいぶ強く、人外の生き物に対する理解もかなり深いことがわかる。
妖精さんの事情を話せば、「友人を連れてきてくれてありがとう」とPCたちに感謝の言葉を述べる。また、PCたちが「人」ではないことを一目見て理解するが、怪しむことなく、むしろ妖精さんとこれからも仲良くしてほしいと頼んでくる。「せっかくだから晩御飯も一緒にどうだ?」と彼はPCたちと正樹を招待するだろう(PCたちが望めば、泊めてもらうこともできる)。
この場面の最後に、妖精さんはウィリアムに商店街で見つけたアクセサリーについて話して、もしPCに譲ってもらったらそのことも告げるだろう。親切にしてくれたPCたちに心から感謝している、と妖精さんは言う。
PCたちはウィリアムの招待を受けて、あるいは「またね」と告げて、この小さな冒険に幕を下ろすことになる。
PLたちに次が最後の場面であることを伝えてください。
――― × ――― × ――― × ―――
場所:森の入口
時間:昼
次の日、妖精さんや正樹は再びPCたちに会いに来る。PLから提案があれば、自分から会いに行くこともできる。
もし前の場面にて、一人だけアクセサリーを入手できなかった子がいた場合、妖精さんがプレゼントしてくれる。話を聞けば、「ウィリアムに話したあと彼が買ってくれたの」と答える。
妖精さんたちがここに滞在している間、数日間だけだが正樹と一緒に遊びに行く、と二人は約束したので、PCたちにも「良ければ一緒にどうかな?」と正樹が聞いてくれる。また、正樹は「今後も一緒に遊んだり、友達でいてくれると嬉しいな」とPCたちに言う。理解してくれる人を見つけた正樹や、新しい友達ができたPCたち。みんなこれからもっと楽しい日々を送ることになるだろう。
シナリオはこれにておしまい。お疲れ様でした!