魔道書大戦RPG マギカロギア
人数:3人
リミット:3サイクル(9シーン)
レギュレーション:基本ルールブック(大判)使用
推奨PC:第3~4階梯
難易度:普通(全員が初期作成だとやや難しいかもしれない)
大法典からの招集要請がPCたちに届く。支部に集まったPCたちは、上司から一つの映像資料を見せられる。
……そこには、モンスターが蔓延る、剣と魔法の世界が映っていた。
本作は、「河嶋陶一朗/冒険企画局」「株式会社アークライト」「株式会社新紀元社」が権利を有する『魔道書大戦RPG マギカロギア』の二次創作物です。
©河嶋陶一朗/冒険企画局/アークライト/新紀元社
本作を遊ぶのにマギカロギアの基本ルールブックが必要です。本文中の「ルルブ」「ルールブック」表記は基本ルールブックを指しています。
この先はGMする方のみ読み進めてください。
――― × ――― × ――― × ―――
ゲームの世界に興味を持った〈混血主義者〉の〈書籍卿〉『北天を統べる者』は、禁書<栄えある英雄たちの冒険譚>の力を借りて、現実にある一つの町にファンタジー世界の設定を溶け込ませた。その影響で、町の住人の記憶が曖昧になり、自分たちがそのファンタジー世界の住人だと思い込み始めている。
ちなみに、<栄えある英雄たちの冒険譚>はもともと、とある古くて高難易度のRPGの攻略本らしい。攻略本があってもクリアできない人が大勢いたため、多くの人の憤慨を集めた一冊となっている。
――― × ――― × ――― × ―――
魔法災厄が発生したとの知らせを受け、PCたちは大法典の支部に召集される。案内された会議室のような部屋に、上司がすでに座って待っている(上司はシナリオと直接かかわらないので詳細は設定されていない、GMのPCに置き換えてもかまわない)。
PCたちが着席したら、上司はとある町に魔法災厄が発生したと話す(洋風建築の大劇場があれば、どの町でも構わない。特に思いつかない場合は、碧浦(あおうら)町という場所にしてください)。
「詳細は……まずこれでも見てくれ」
上司は少し疲れた表情でそう言って、二日前に現地にいた魔法使いが撮ったという映像を見せてくれる。
空中に投影されるそれには、どこかにある劇場が映っている。外装はヨーロッパを連想させるバロック様式で、白い外壁に柱、そして彫刻が多く施されている。
そんな建物の入り口に、黒いローブに全身を覆われた人物が駆け寄って、慌てて扉を開けて中に入っていった。それに続いて、中世風の剣士のような服に赤いマントを羽織った青年が、剣を携えて同じく建物入ろうとするが、扉は先ほどの人物にロックされたようだ。
「おのれ、魔王!姫を解放して、モンスター共々投降しろ!」
青年が扉を叩きながらそう叫んだところで、映像が終わる。
上司は続けて説明してくれる。この町で発生した魔法災厄は禁書<栄えある英雄たちの冒険譚>によるもので、町中の人々を巻き込んで「よくあるRPGゲームの世界」を作り上げようとしているようだ。映像に映った青年はどうやら「主人公」の「勇者」で、勇者に追いかけられたのが「魔王」のようだ。大劇場は「王宮」となり、「姫」がその中に囚われているらしい。何故かモンスターまで街中に出現しているようだが、今のところそちらによる大きな被害は出ていないようだ。
「どこまでが真実かは君たちが見極めてくれ。では、禁書の回収を頼む」
上司は集めた資料(ハンドアウト)をPCたちに見せると、現地へ向かうように指示する。
GMは、ハンドアウト「勇者」、「魔王」、「姫」を公開してください。それぞれPC1~3のシナリオアンカーになる。属性は自由に決めてください。
※シナリオ上、魔王(南千草)は中性的容姿を持つ女性で、ローブを着ているため男だと誤解されることもある。GMが描写するときはあえて性別を伏せてもかまわない。
現場に到着したPCたちは、町の人々が全員、ゲームの中に出てくるキャラクターのような服装をしていることに気づく。驚くなり、感心なりしていると、黒い影が目の前を横切る。影に目を向けると、それは猟犬に似た姿で、鋭い牙を持つ「モンスター」である。どこかへ向かっているのか、とても速い速度で町を駆けていく。モンスターの通る道にいる人たちは悲鳴を上げながら逃げていくが、モンスターは彼らを攻撃する意思がないのか、近くにいる者を威嚇こそするが、それ以上のことはせずただひたすら走っていき、瞬く間にPCたちの視界から消えた。
GMは、ハンドアウト「モンスター」を公開してください。また、PLたちから質問がなければ、PCたちの魔力を決定して、メインフェイズへ進んでください。
――― × ――― × ――― × ―――
基本ルルブのシーン表を使用する。GMが望むなら、8番を「王宮。この町にある劇場のはずだが、今は「魔王」に占領されているようだ。」に変更してもかまわない。
「不思議系災厄表」を使用する。GMの好みでシリアス風味を増やしたいのなら「超常的災厄表」に変更してもかまわない。
「魔王」に憑依している断章<栄えある>の憑依深度は、シナリオ中上昇することはない。
「勇者」に憑依している断章<英雄たち>は、サイクルが終了するたび憑依深度が上昇する。断章<英雄たち>を回収していなかった場合、サイクルの最後にマスターシーン「レベルアップ!」が発生する。
オンセ・テキセ向けになるが、メインフェイズ以降、GMは以下のような演出で魔法災厄を表現することができる。
町にいる人々はみんな、セリフがひらがな表記になり、「 」で言葉を区切って、「▼」などの記号でセリフの終わりを示す。さらに演出するのなら、彼らの声が聞こえない代わりに、セリフがメッセージウィンドウで表示されたり、ポポポなどの効果音が聞こえることにしてもよい。
また、PCから見ると、NPCたちの姿がぼやけて見える。よく見れば、それがドット絵のようになっていると気づく。
この効果は断章の回収により解消される。断章<栄えある>が回収されたら、セリフが元通りになる。断章<英雄たち>が回収されたら、ドット絵化の効果がなくなる(ただし、ハンドアウトの秘密に書かれたNPCたちの思い込みは、禁書が回収されるまで解消されることはない)。
※導入で上司が見せてくれた映像ではここまでひどくなってないが、数日経ったことで魔法災厄も深刻になったため「ゲーム化」が進んだのだ。
断章に憑依されている間は、その影響で簡単な魔法が使えるようにRPするとより世界観に溶け込めるかもしれない。例えば、勇者なら自分の「攻撃力」を上げる魔法とか、魔王ならモンスターを治せる魔法とか。あくまでも演出としてなので、魔法はどれもフレーバーで、断章のステータスに実際の影響がないものが望ましい。
(王はもちろん魔法を使えるが、正体がバレない限り、わざとPCたちの前で使うことはないだろう。)
断章に憑依されていないため、あくまでこれはイベントだと思い込んで自分の役を演じ切ろうとしている。町の機能を停止させてまで「イベント」を行う異常さについては魔法災厄のせいで認識していない。彼女を調査した後、もし真相を告げたとしても信じてもらえない(「みんな真面目にやってるのよ、そんなメタい話はダメ!」と返される)。
見た目は青年で、到底姫の親には見えない。気品のある振る舞いをし、表情は穏やかだが、PCたちが彼を観察するのなら、彼の瞳の底から好奇心があふれ出ているように感じるだろう。勇者と話す場面をPCが目撃するのなら、彼は優しい口調で勇者に戦闘のコツを教えたり、「魔王を倒せるのは君しかいないんだ」などと言って戦わせようとしていることがわかる。
正体がばれたと知った書籍卿は、「あはは、君たちも僕のゲームに参加する?一緒に楽しもうよ」と笑いながら誘ってくる。PCがどう返事しても、彼は楽しそうに「ゲーム」を続けようとするだけ。そして最後に、「僕は王様だけど、勇者みたいなこともやっちゃうかな?」と言って、名乗って応戦する。
魔法戦に負けたとしても、彼は「あーあ、なんでみんなもっと楽しんでくれないかなー?」と残念がるだけで、命乞いなどしない。彼の処遇はPCたちが決めて構わない。
※第2サイクル目終了時、マスターシーン「勇者のレベリング」が発生した場合、そちらを優先に行ってからこのシーンに移行してください。
サイクルが終了するたび、断章<英雄たち>が回収されていない場合、このマスターシーンが発生する。
どこからともなく、ファンファーレのような音楽が周囲に鳴り響く。音の発生源をたどれば、そこには勇者がいる。彼の頭上に、看板(メッセージウィンドウ)が宙に浮いてるように現れる。
「レベルアップ! ゆうしゃは レベル○に なった!」
と、看板に文字が浮かび、数秒後それは看板ごと消えてなくなる。
GMは断章<英雄たち>の憑依深度を1上昇しください。上昇後の数値は看板に浮かぶ「○」のところに入る数字になる。
2サイクル目終了時、ハンドアウト「モンスター」が調査されていない、または「ポチ」が保護されていない場合、このマスターシーンが発生する。
「見つけた!この化け物、絶対に逃がさないからな!」
そう叫ぶ勇者の声が聞こえてくる。見れば、彼の前には唸り声をあげながら威嚇しているモンスターがいる。だが、勇者は怯むことなく、持っている伝説の剣をモンスターに目がけて降り下ろす。
「ワオーーーーーン!」と傷つけられたモンスターは悲鳴を上げて、逃走してしまう。
これ以降ハンドアウト「モンスター」を調査できないものとする。GMはその旨をPLたちに説明してください。
※断章<英雄たち>が回収されていない場合、続いてマスターシーン「レベルアップ!」に移行してください。
断章<栄えある>及び断章<英雄たち>が回収されたら、このマスターシーンが発生する。
PCたちは勇者の姿を目撃する、彼はあたりを見回すと、困惑した表情でつぶやく。
「これは……どういうことだ?モンスターも魔王の気配もなくなってる?」
「もしかしてもう討伐されたってことか?!……一度王様に報告したほうがいいか」
そう言って彼は走り去る。どうやら断章を剥がしたことで、勇者は「敵」の気配を感知できなくなったようだ。そして、この町には「王様」と言う存在がいることにPCたちは気づく。
勇者がしばらく走ると「王様!」と声を上げて、ある男と合流したようだ。そこで二人はモンスターや魔王について相談を始めた。
GMはハンドアウト「王」を公開してください。
※PCたちが勇者を引き止めて話を聞くのなら、ハンドアウトの内容を勇者が話したということにして、そのまま公開しても可能。
※マスターシーン「勇者のレベリング」と同時に発生した場合、こちらのシーンを先に行ってください。続いての「勇者のレベリング」では、王に会いに行く途中に偶然モンスターと遭遇した設定で進んでください。
――― × ――― × ――― × ―――
準備を整えた上司から、「王宮」にて編纂を行うと念話が届く。
禁書は剣を持つ勇者のような操り人形の姿を取る。物語(冒険譚)に操られ、人形はPCたちに攻撃を仕掛けるだろう。
『北天を統べる者』を倒せずにクライマックスフェイズが始まった場合、彼は姿を現し、PCたちと魔法戦を行う。分科会を分断して同時に戦うことになるだろう。その際どのように分断するかはGMとPLが相談して決めてください。
※ここで記した断章の【魔力】は、禁書魔法の修得による減少が含まれていない値である。そのため、魔法戦を行うときGMは減少を忘れないように調整してください。
●断章<栄えある>
攻撃3 防御4 根源3 魔力6 初期憑依深度2
領域:星 特技:《黄金》、《勝利》
【貫撃】 呪文 《黄金》 P162 (禁書魔法)
【黄金律】 装備 P113
●断章<英雄たち>
攻撃4 防御2 根源3 魔力6 初期憑依深度1
領域:力 特技:《情熱》、《衝撃》
【騎士召喚】 召喚 《情熱》 P97
【鉄槌】 呪文 《衝撃》 P126 (円卓)
【書影】 装備 P165 (禁書魔法)
●断章<冒険譚>
攻撃3 防御3 根源4 魔力8
領域:歌 特技:《物語》
【写本】 呪文 《物語》 P118 (書工)
【角笛】 装備 P112
●禁書<栄えある英雄たちの冒険譚>
攻撃4 防御4 根源4 魔力20
領域:歌 特技:《黄金》、《衝撃》、《物語》、《勝利》、《情熱》
【騎士召喚】 召喚 《情熱》 P97
【写本】 呪文 《物語》 P118 (書工)
【鉄槌】 呪文 《衝撃》 P126 (円卓)
【貫撃】 呪文 《黄金》 P162 (禁書魔法)
【角笛】 装備 P112
【黄金律】 装備 P113
【書影】 装備 P165 (禁書魔法)
●『北天を統べる者(ポラリス)』
攻撃4 防御3 根源3 魔力7
領域:星 特技:《天空》、《眠り》、《微笑み》 魂の特技:《道標》
【緊急召喚】 召喚 可変 P97
【騎士召喚】 召喚 《天空》 P97
【魔睡】 呪文 《眠り》 P109
【悪戯】 呪文 《微笑み》 P171 (混血主義者)
【吸魔】 装備 P169 (学派・汎用)
勇者(伊東修):かっこよく世界を救いたい)
姫(大西実穂):化粧の腕を上げたい)
魔王(南千草):モンスター(動物)たちを怪我させることなく守りたい)
モンスター(ポチ):ご主人の元へ帰りたい)
王(『北天を統べる者』):町を「面白く」したい
――― × ――― × ――― × ―――
すべての断章を回収し、禁書の封印に成功したら、町の人々も元通りになる。
勇者……修は、はっとして自分を見下ろして、着ている勇者服に驚くだろう。周りにいる人々も状況を認識してざわつく。
しかしそのあとすぐ、「王宮」から姫を演じている実穂が駆け寄ってくる。「勇者様のおかげで、魔王は退治され、国に平和が戻りましたわ!これからは私も一緒に、この国を守っていきましょう!」と大きな声で宣言し、最後に、舞台役者がカーテンコールにこたえるようにお辞儀をし、隣にいる修も実穂に促されてお辞儀をする。そんな二人に回りの人々(とローブを脱いでこっそり見守っている千草)が拍手を送り、この混乱も収束していくだろう。
NPCたちはそれぞれ日常へと戻っていく。PLたちの希望があれば、彼らの秘密に書いてあるような日常をPCに見せるといいだろう。
禁書が引き起こした魔法災厄がさらに悪化し、町の人全員が自分の元の生活を思い出せなくなり、完全に「設定」を受け入れてしまうだろう。実際に、「モンスター」による被害が現れることもあるかもしれない。
関係欄にあるアンカーの名前を「勇者」「姫」などから、各自の秘密で書かれている本当の名前(伊藤修、大西美穂など)に変更することができる。GMはエピローグの処理が終わったらPLたちにそのことを提示してください。
――― × ――― × ――― × ―――
伝説の剣を携えて魔王に挑む勇者。赤いマントは勇者の証!レベルを上げるためにモンスターを探し出して倒そうとしている。
【秘密】
断章<英雄たち>に憑依されている、町に住んでいる大学生。本名は「伊東修(いとう おさむ)」。ゲーマーであり、家に引きこもってゲームをするのが一番理想的な休日の過ごし方。色んなジャンルのゲームを一通りプレイしているが、一番好きなのは勇者になれるRPGだ。魔法災厄によって記憶が改竄されて、自分が本物の勇者だと思っている。
○断章<英雄たち>
攻撃4 防御2 根源3 魔力6 初期憑依深度1
領域:力 特技:《情熱》《衝撃》
【騎士召喚】 召喚 《情熱》 P97
【鉄槌】 呪文 《衝撃》 P126 (円卓)
【書影】 装備 P165 (禁書魔法)
黒いローブを着ている人型の魔王。王宮を占拠して姫を捕らえているようだ。噂では手下のモンスターを全て王宮に集めていて、中に攻め入るのも魔王を倒すのも難しいと言われている。
【秘密】
断章<栄えある>に憑依されている、町に住んでいる獣医。本名は「南千草(みなみ ちぐさ)」。中性的な容姿で性別を間違われることがたまにあるが、女性である。魔法災厄に影響されて、すべてのモンスターが自分のペットだと思うようになり、「ペット」を害そうとする勇者を敵として認識している。勇者を避けるために逃げ込んだ王宮は、広いわりに人気がないため、使われてない場所を借りて「ペット」たちと暮らしている。姫については何も知らないようだ。
○断章<栄えある>
攻撃3 防御4 根源3 魔力6 憑依深度2
領域:星 特技:《黄金》《勝利》
【貫撃】 呪文 《黄金》 P162 (禁書魔法)
【黄金律】 装備 P113
――― × ――― × ――― × ―――
※シナリオ制作の裏話などです、読まなくてもシナリオを回せます。
マギカロギアは魔法を扱うシステム、だからこそ一般的に「魔法」「ファンタジー」と言えばこんなイメージ!というのを詰め込んだシナリオを書きたくなったのです。そうなるとやはりRPGゲームが一番身近で想像しやすかったので、このシナリオが出来上がりました。
魔法災厄ですべての人が洗脳されたようになるのもいいんですが、少し単調になってしまうので、記憶がどれぐらい改ざんされるかは人によって違うようにしました。ハンドアウトの中では、断章に憑依された人のほうがより現実離れになっています。
あとはゲーム化の進み具合も回収された断章の数によって変化しますが、これはテストプレイの準備中に思いついた記憶があります。基本的にテキストセッションを行いますので、シナリオ中にも書いた演出をしたらとても盛り上がりました。
魔王が宿主(被害者)で王のほうが敵というのも、あえて逆の設定にしよう!と意図的に決めたので、少しでも意外と思ってもらえたら嬉しいです!ちなみに今回のNPCの名前は「東西南北」で揃えましたが、書籍卿の魔法名は我ながら気に入ってるのでむしろPCに使いたいと思ってたりしました…。(一応解説するとポラリス=北極星なので「北天を統べる者」です。)