魔道書大戦RPG マギカロギア
人数:2人
リミット:3サイクル(6シーン)
レギュレーション:スタートブックだけでも遊べます
推奨PC:第3階梯(初期作成から可能)
難易度:簡単(初心者向け)
「今度、私が手伝っている音楽教室の発表会があるの。子供たちの演奏をぜひ聞きに来てほしいわ」
魔法使いでありながら演奏家である友人から誘われて、あなた達は町の市民会館にある小さなコンサートホールまで足を運んだのであった。
特に制限はない。初期作成から問題なく遊べます。
魔法使いの友人に協力的である、もしくは任務でなくとも禁書の回収に意欲的なPCのほうが動かしやすいだろう。
本作は、「河嶋陶一朗/冒険企画局」「株式会社アークライト」「株式会社新紀元社」が権利を有する『魔道書大戦RPG マギカロギア』の二次創作物です。
©河嶋陶一朗/冒険企画局/アークライト/新紀元社
本作を遊ぶのにマギカロギアの基本ルールブックが必要です。本文中の「ルルブ」「ルールブック」表記は基本ルールブックを指しています。
※この先はGMする方のみ読み進めてください。
――― × ――― × ――― × ―――
昔々、とある無名の音楽家は自分の曲を綴った楽譜集を出版した。しかし、音楽家の才能は生涯評価されることがなく、彼の楽譜を欲しがる人もいなかった。音楽家の無念と悔しさは彼の死後でもなお楽譜に残り続けている。そして何かのきっかけで魔法の影響を受け、禁書<晴れ空エチュード>が誕生したのであった。
自分と同じような不遇の人生を他人にも経験させたい――音楽家の最期の願いは歪められた形で禁書に宿り、やがて魔法災厄を引き起こすようになった。
近頃、魔法災厄をいくつか観測した〈大法典〉は禁書を回収しようと動き始めた。魔法の痕跡を辿った結果、PCたちが偶然居合わせたコンサートホールにてその気配を捉えた……。
1:音楽教室の先生が子供たちを励ましている。そのシーンに星の魔素が1点発生する。
2:スタッフが忙しなく舞台の準備をしている。そのシーンに獣の魔素が1点発生する。
3:楽器の状態の最終チェックが行われている。そのシーンに力の魔素が1点発生する。
4:誰かが練習しているのか、演奏が聞こえてくる。そのシーンに歌の魔素が1点発生する。
5:観客の期待に満ちた表情は舞台袖からもよく見える。そのシーンに夢の魔素が1点発生する。
6:これから演奏する子供の緊張が伝わってくる。そのシーンに闇の魔素が1点発生する。
通常の運命変転表を使う。
初期憑依深度を設定してあるが、マスターシーン「こどものための行進曲」でのみ上昇する。詳細は該当項目を参照してください。
セッションが始まる前に、GMは(好みの方法で)ランダムにハンドアウトを2枚選ぶ。選ばれた人物は断章の宿主になる。それぞれに憑依した断章を決め、選ばれたハンドアウトの秘密が公開されるとき、対応する【秘密:断章】も同時に公開してください。
宿主はセッションごとに変更可能なので、このシナリオは周回可能である。
――― × ――― × ――― × ―――
このシナリオの導入はPC共通の1シーンのみ。
PCたちは、魔法使いでありながら演奏家である友人「倉光小夜(くらみつ さよ)」から、コンサートへの招待を受ける。
※直接会う描写でも、電話や念話での連絡でも、GMがやりやすいように決めて構わない。
「今度、私が手伝っている音楽教室の発表会があるの。子供たちの演奏をぜひ聞きに来てほしいわ」
「私もピアノの伴奏で出演するから、楽しんでもらえるように頑張るよ」
彼女は発表会の日時と、会場は碧浦(あおうら)町の市民会館にある小さなコンサートホールであることを教えてくれる。
PCたちが承諾すれば、小夜は「よかった、それじゃあ待ってるわね」と喜ぶだろう。
※コンサートホールがあるならば、町や場所は変更しても構わない。
発表会当日、受付のロビーにて小夜がPCたちを迎える。今日は子供たちの調子がよく、いい演奏ができそう、などと話していると、小夜に念話が届く。
驚きつつも応じた彼女は見る見るうちに表情が険しくなり、最後に「え、待ってください…!」と思わず叫んだ。どうやら念話は向こうから切られたようだ。戸惑う小夜にPCが話しかければ詳細を教えてくれるし、聞かなくても彼女は以下の事情を話す。
「〈大法典〉からの連絡だったけれど、『晴れ空エチュード』という禁書がこの会場に紛れ込んだらしいの」
「回収してほしいって……もうすぐ発表会が始まるのよ、私も準備しなくては……」
「あぁ、でも断章が演奏者に憑依するらしくて、しかも憑依された人が演奏すれば魔法災厄が起きてしまうの……もし子供たちに何かあったら……!」
小夜の代わりに任務を引き受けるのなら、小夜は申し訳なさそうにしつつもありがたくPCたちに任せる。PCから行動がなければ、小夜から「せっかく来てくれたのにごめんなさい、でも禁書の回収を手伝ってほしいの。お願い…!」と頼まれることになる。
任務を引き受けたら、小夜はほっとしてPCたちを楽屋エリアへ案内して、発表会に参加する子供たちを紹介する。
GMは以下のハンドアウトを公開してください:「火口 直人」、「白土 響助」、「小清水 奏」、「風早 海鈴」
また、PCの魔力決定を行ってください。
シナリオアンカーは、PCがそれぞれ自由にハンドアウトの4人から一人を選んで追加してください。属性は自由に決めて構わない。
PCの使命は【禁書の回収】になる。
子供たちにもPCたちのことを紹介した後、小夜は開演の準備を整えるために一旦離れることになる。去り際にもう一度「子供たちのことをお願いね…!」とPCたちに頼むだろう。
以上の処理が終わったら、メインフェイズへ進んでください。
――― × ――― × ――― × ―――
このシナリオのリミットは3サイクルであり、サイクル2の1シーン目からサイクル3の2シーン目(3~6シーン目)の終了時、マスターシーン「こどものための行進曲」が発生する(合計4回発生する)。
また、断章<晴れ>の宿主の秘密が公開されたシーンの終了時、マスターシーン「二人のための協奏曲」が発生する。
※マスターシーン「二人のための協奏曲」と同時に発生した場合、「二人のための協奏曲」を先に行ってください。
準備を整えた小夜が控え室に来て、次に演奏させても大丈夫な子供は誰かとPCに尋ねる。
初回(サイクル2の1シーン目終了後)では、まもなく開演のアナウンスが流れて、調査の様子を伺いつつ「演奏しても大丈夫な子から準備してもらいたいけれど、どの子にお願いしていいかしら?」と小夜がPCの意見を聞く。
2回目以降も同じようにPCに選んでもらうが、既に演奏した子供は当然選べなくなる。
○憑依されていない子供が演奏した場合
子供は無事、練習していた楽曲を演奏することができる。優美な旋律がホールに響き渡り、楽屋エリアにいるPCたちの耳にも届いた。奏者によっては、小夜のピアノ伴奏も聞こえてくるだろう。
そのまま次のシーンへ進んでください。
○断章の宿主が演奏した場合
演奏を始めた瞬間、本来の楽曲にはないはずの不協和音がホールの中に大きく鳴り響く。聞いた人に不幸をもたらそうとする音は演奏者の精神をも蝕み、災厄を引き起こす。
断章の影響により、演奏を始めようとした宿主に「運命変転」が発生する。また、憑依深度が1上昇する。以上の処理が終わったら、次のシーンへ進んでください。
※マスターシーン「こどものための行進曲」と同時に発生した場合、先にこのシーンの処理を行ってください。
控え室に戻ってきた小夜はPCたちの元へ駆け寄る。彼女の手には一つの断章が握られていた。
「子供たちに憑依しようとしていたみたいだけれど、その前に回収できて安心したわ。これも禁書の一部よね?」
小夜は回収した断章をPCたちに渡す。PCたちはプライズとして断章<空>を獲得し、魔法や魔力の剥奪を行える。
――― × ――― × ――― × ―――
子供4人の演奏が終わると、小夜はPCたちに話しかける。使用されていない控え室に編纂の魔法陣がすでに用意されたので、いつでも編纂を行えるとのこと。また、この後、最後の曲として全員の合奏があるので、編纂が終わったら見に来てほしい、と。
「任せっきりで本当に申し訳ないけれど……ぜひホールに来てくださいね、最高の演奏であなた達を迎えるから!」
PCたちが準備できたら、魔法陣のある控え室へ移動し、禁書<晴れ空エチュード>の編纂を行う。禁書は怒り狂う音楽家(指揮者)の姿で現れ、理不尽な感情をPCたちにぶつけるだろう。
攻撃3 防御3 根源3 魔力6 憑依深度1
領域:力 特技:《太陽》《炎》
【火花】 呪文 《炎》 P101/スタブP191
【浄化】 呪文 《太陽》 P120/スタブP198 (訪問者)
攻撃2 防御4 根源3 魔力4 憑依深度0
領域:星 特技:《天空》
【動揺】 呪文 なし P102/スタブP191
【願望】 装備 P121/スタブP198 (訪問者)
攻撃4 防御2 根源3 魔力5 憑依深度1
領域:歌 特技:《旋律》《狂気》
【騎士召喚】 召喚 《旋律》 P97/スタブP190
【同調】 呪文 なし P102/スタブP191
攻撃4 防御4 根源3 魔力15
領域:歌 特技:《天空》《太陽》《炎》《旋律》《狂気》
【騎士召喚】 召喚 《旋律》 P97/スタブP190
【火花】 呪文 《炎》 P101/スタブP191
【同調】 呪文 なし P102/スタブP191
【動揺】 呪文 なし P102/スタブP191
【浄化】 呪文 《太陽》 P120/スタブP198 (訪問者)
【願望】 装備 P121/スタブP198 (訪問者)
※【同調】【願望】は断章や禁書に使われることはないが、フレーバーとして持たせている。また、剥奪したらPCの役に立つかもしれない。
火口 直人:仕事が忙しい両親と一緒に休日を過ごしたい
白土 響助:好きな女の子と遊びに行きたい
小清水 奏:もっといろんな楽曲を演奏してみたい
風早 海鈴:スランプから脱却したい
倉光 小夜:音楽教室の子供たちに音楽を楽しんでほしい
――― × ――― × ――― × ―――
禁書を無事に回収した場合、「間もなく最後の合奏が始まる」と会場アナウンスが流れる。PCたちが急げば、小夜が用意してくれた席に着くことができる。回収した禁書を大法典に届ける前に、演奏を楽しむぐらいの時間は問題なく取れるだろう。
やがてステージ上に子供4人が集まり、演奏を始める。4つの旋律が織り交ざり、優雅な楽曲を紡ぎ出す。発表会を成功させたいと願う彼らの気持ちを込めた演奏に心を揺さぶられるだろう。
最後の一音が奏でられたあと、会場に大きな拍手が響く。発表会が無事に終わったことでほっとした小夜の姿も見られる。
こうして、思わぬトラブルに見舞われた発表会は大成功を収めて、幕を下ろした。
禁書のもたらす魔法災厄は会場の人々にまで降り注ぐ。トラブルが起きてしまい、発表会は中止になる。さらなる被害が起こらないように、PCたちはこれからも禁書に挑み続けなければならないだろう。
――― × ――― × ――― × ―――
11歳の男の子。音楽教室でピアノを習っている。無口でクールに見えて、緊張はしていないようだ。
【秘密】
親に言われて楽器を習い始めたので、嫌いではないが好きでもない。真面目なので、練習をちゃんとこなして発表会に臨んでいる。
13歳の男の子。音楽教室でチェロを習っている。そわそわしていて落ち着かない様子だ。
【秘密】
片思いしているクラスメイトの女の子が発表会を見に来るから、絶対にミスしてはならないと自分にプレッシャーをかけてしまい、とても緊張している。
10歳の女の子。音楽教室でヴァイオリンを習っている。好奇心を抑えきれない様子で、キョロキョロとあたりを見回している。
【秘密】
音楽を純粋に楽しんでおり、上手に演奏できたときに褒めてもらうことがうれしい。発表会もずっと前から楽しみにしているようだ。
11歳の女の子。音楽教室でフルートを習っている。大人しい子だけど、礼儀正しくて笑顔が可愛い。
【秘密】
最近、どれだけ練習しても演奏が上達する実感がないことが悩み。小夜にアドバイスをもらい、発表会で状況を打開するヒントを得ようとしている。
※以下のハンドアウトはGMが決めた宿主の秘密が開かれたときに一緒に公開してください。
この人物は断章<晴れ>に憑依されている。憑依された状態で楽器を演奏すれば、この人物に魔法災厄が降りかかってしまうだろう。
○このシーンの終了時、マスターシーン「二人のための協奏曲」が発生する。
○断章<晴れ>
攻撃3 防御3 根源3 魔力6 憑依深度1
領域:力 特技:《太陽》《炎》
【火花】 呪文 《炎》 P101/スタブP191
【浄化】 呪文 《太陽》 P120/スタブP198 (訪問者)
この人物は断章<エチュード>に憑依されている。憑依された状態で楽器を演奏すれば、この人物に魔法災厄が降りかかってしまうだろう。
○断章<エチュード>
攻撃4 防御2 根源3 魔力5 憑依深度1
領域:歌 特技:《旋律》《狂気》
【騎士召喚】 召喚 《旋律》 P97/スタブP190
【同調】 呪文 なし P102/スタブP191
――― × ――― × ――― × ―――
作者がセッション中に実際に流したBGMを一部紹介します。全てクラシックの楽曲なのでフリー音源や、デジタルショップなどでも探しやすいかと思います。
Kinderszenen, Op.15: 7. Träumerei (Schumann)
子供の情景 作品15 7.トロイメライ(シューマン)
Cello Suite No.1 in G major, BWV 1007: 1. Prelude (Bach)
無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 前奏曲(バッハ)
Violin Sonata No. 1 in G major, Op. 78 (Brahms)
ヴァイオリンソナタ 第1番 ト長調 作品78(ブラームス)
Serenata, Op.6 (Toselli)
嘆きのセレナーデ(トセリ)
Swan Lake, Op. 20: Danse espagnole (Tchaikovsky)
『白鳥の湖』より スペインの踊り(チャイコフスキー)
Étude Op. 10, No. 12 in C minor Revolutionary (Chopin)
練習曲 ハ短調 作品10-12 『革命のエチュード』(ショパン)
こちらのアレンジをお借りしました:http://commons.nicovideo.jp/material/nc86999
Requiem In D Minor K626: III Sequenz - Dies Irae (Mozart)
レクイエム ニ短調 セクエンツィア 第3曲 怒りの日(モーツァルト)
こちらのアレンジをお借りしました:http://commons.nicovideo.jp/material/nc122281
Salut damour, Op.12 (Elgar)
愛の挨拶 作品12(エルガー)
(某金色のコ○ダのサントラにあった5人合奏Ver.をお借りしました)
――― × ――― × ――― × ―――
※シナリオ制作の裏話などです、読まなくてもシナリオを回せます。
CoCでもクラシック音楽を取り上げたシナリオを書いたことがありますが、クラシックが本当に好きなのでマギロギでも書きました。と言っても今回はギミックに指定の曲を組み込んでいないので、そこまで布教しているわけではありませんが……。
ただ、実はシナリオを書き始める前に(頭の中ではプロットが完成した時点で)、セッションのときに流すBGMはすでに全曲決まりました。付録にも一部記載しましたが、実際はもう何曲かあります。実卓では流せなかった運命変転用の曲とか。初めての試みでしたが楽しかったです!
今回は先にタイトルが決まってて、そこから内容を考えたので、爽やかなタイトルの割に背景がマギロギらしい暗い雰囲気になりました。古き良きマギロギシナリオに習ってタイトル=禁書名にした結果でもありますね。でもエチュード(練習曲)=技術の研鑽のために書かれた曲のイメージもありますので、音楽教室の生徒であり、これから努力して成長するであろう子どもたちにはぴったりかな?という考えも含めたタイトルでした。
初心者向けにするというのも最初から決めました(というか友人たちに布教したい一心でした)(まだできてませんが)。ただ普通のシナリオとは違うなにかを入れたいな、運命変転の処理をどうしようかな、などを考えているうちに、宿主ランダム・シーンが終わるたびにマスターシーンを挟むと言ったギミックを思いつきました。これなら実質作者自身もプレイヤーになれますねっ!
自作はだいたい自分の好きなものを詰め込んでるからプレイヤーしたいものばかりですよね。周回もできるので、もし気に入ったら回し合いなどしていただければ嬉しいです!
最後に、今回もNPCたちがいっぱいいますので、命名についての裏話で締めようと思います。
倉光小夜:名前は「小夜曲」から。子供たちを優しく見守るイメージができていればなと思って、苗字に「光」という文字も入れてみました。
子供たち:苗字は四大元素(火風水土)から選びました。名前には「音」になる文字を選んでみました。直人だけ、読み方が「なおと」なので後ろ二文字が「音」になるという強引なつけ方になりましたが、他の子は「響」、「奏」、「鈴」なのでセーフです(?)。ちなみに海鈴は昔作ったオリキャラの名前を拝借しました。