神話創世RPG アマデウス
プレイヤー人数:3人
リミット:2サイクル(6シーン)
想定プレイ時間:テキセ10~12時間
推奨レベル:1
レギュレーション:基本ルルブのみで遊べます
※ギリシャ神話をモチーフとする話ですが、シナリオの都合上微改変、独自の解釈を追加した箇所があります。
不和の林檎――かつてトロイ戦争の起因となった黄金の果実。
「最も美しい女神」の手に収まったはずのそれが何者かによって盗まれた。
犯人が逃げた先、とある高校に絶界が発生したとの知らせを受け、
赴いた神子たちが目にしたのは……ミス・コンテスト開催のお知らせ?!
神話創世RPG アマデウス
「黄金の林檎を奪還せよ!」
女子高生同士の熾烈なバトルに巻き込まれないよう、
黄金の林檎を盗人から奪い返せ!
○PC1
推奨親神:ヘラ、アテナ、もしくはアフロディテ
あなたは親神から予言を授かった。
「『最も美しい女神』に贈られた黄金の林檎が盗まれた。取り戻さなければ、いずれ世界に紛争をもたらすことになるだろう」
あなたの【任務】は、犯人を見つけ出し、黄金の林檎を取り戻すことだ。
○PC2
推奨親神:ヤマト神群
あなたは親神から予言を授かった。とある高校に〈絶界〉が発生して、学校の生徒が全員囚われているそうだ。また、神話災害を引き起こした怪物も中に身を潜めているとのこと。
あなたの【任務】は、怪物を倒し、〈絶界〉に囚われた人たちを助け出すことだ。
○PC3
推奨親神:(ヘラ、アテナ、アフロディテ以外の)ギリシャ神群、もしくは(2巻以降使用の場合)北欧神群
あなたは夢を見た。黄金の林檎を手にするために、何人もの少女たちがお互いを傷つけ合い、やがて全員力尽きて、倒れてしまう。そこを狙ったかのように、黒い影が少女たちに迫り……彼女たちは命を落としてしまう。
あなたの【任務】は、少女たちを助けることだ。
本作は、「河嶋陶一朗/冒険企画局」「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『神話創世RPG アマデウス』の二次創作物です。
©河嶋陶一朗/冒険企画局/KADOKAWA
本作を遊ぶのにアマデウスの基本ルールブックが必要です。本文中の「ルルブ」「ルールブック」表記は基本ルールブックを指しています。
この先はGMする方のみ読み進めてください。
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このシナリオの目的は、「不和の林檎」と呼ばれる黄金の林檎を盗み出した怪物「ラドン」を倒し、怪物によって引き起こされた神話災害を解決することだ。
ギリシャ神話において、ラドンは100の頭を持つドラゴンであり、女神ヘラの果樹園に植えられた黄金の林檎の木を守る存在だった。
そして不和の林檎は、結婚の祝いに招待されなかった女神エリスが、その祝いの場に投げ入れた「最も美しい女神に」と書かれた黄金の林檎を指し示す。ヘラ、アテナ、アフロディテは黄金の林檎を手に入れるために、各々審判のパリスに贈り物の約束をするが、パリスはアフロディテを選び、アフロディテは彼にトロイのヘレナを妻として与えた。その結果、トロイ戦争が始まったのだ。
ラドンが守っていた林檎と不和の林檎は違うものかもしれないが、このシナリオにおいてのラドンは、アフロディテの黄金の林檎も自身が守る林檎と見ており、盗み出したようだ。
ラドンが引き起こした神話災害によって、碧浦高校が〈絶界〉と化してしまい、その生徒もまた不和の林檎の逸話に引きずられる形で、「最も美しい」ことに拘り、ミス・コンテストを開催し競うことになった。このままでは小規模とはいえ、生徒たちの争いが「戦争」に発展してしまうかもしれない。神子たちはそれを阻止するために、ラドンを倒し、不和の林檎を取り戻さなければならない。
これ以降、※から始まるのはGM情報とする。
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推奨親神:ヘラ、アテナ、もしくはアフロディテ
【予言】
あなたは親神から予言を授かった。
「『最も美しい女神』に贈られた黄金の林檎が盗まれた。取り戻さなければ、いずれ世界に紛争をもたらすことになるだろう」
あなたの【任務】は、犯人を見つけ出し、黄金の林檎を取り戻すことだ。
【真実】
親神は更にあなたにこう告げた。「最も美しい女神」に相応しいのは自分であり、故に黄金の林檎は自分の物であるべきだ。犯人の調査を手伝う代わりに、必ず黄金の林檎を自分の元へ持ち帰るように、と親神はあなたに命じた。
この【真実】が公開されると、決戦フェイズの開始時に脅威「惑わす声」が公開される。
【トリガー】
自分の属性の覚醒段階が2段階目になる。
推奨親神:ヤマト神群
【予言】
あなたは親神から予言を授かった。とある高校に〈絶界〉が発生し、学校の生徒が全員囚われているそうだ。また、神話災害を引き起こした怪物も中に身を潜めているとのこと。
あなたの【任務】は、怪物を倒し、〈絶界〉に囚われた人たちを助け出すことだ。
【真実】
「黄金の林檎とはどんな味がするのだろうか」と親神が興味津々に尋ねてきた。怪物の居場所についてのヒントを与える代わりに林檎を譲ってもらえないか、と他の神子や所有者のアフロディテに頼んできてほしいようだ。
この【真実】が公開されると、あなたは親神から怪物の居場所のヒントを獲得する。また、好きなPCに対する【想い】を1点上昇する。
【トリガー】
マスターシーン「怪物の隠れ家」が開始した。
※このシナリオはPvPの意図がないため、PC1(親神がアフロディテではない場合)とPC2の【真実】に書かれた「親神は黄金の林檎がほしい」を示す内容は、PCの【任務】には含まれていないことを予めPLに伝えておくといいだろう。
推奨親神:(ヘラ、アテナ、アフロディテ以外の)ギリシャ神群、もしくは(2巻以降使用の場合)北欧神群
【予言】
あなたは夢を見た。黄金の林檎を手にするために、何人もの少女たちがお互いを傷つけ合い、やがて全員力尽きて、倒れてしまう。そこを狙ったかのように、黒い影が少女たちに迫り……彼女たちは命を落としてしまう。
あなたの【任務】は、少女たちを助けることだ。
【真実】
あなたの夢を知った親神は言った。「黄金の林檎は一つだけではない、取ろうと思えば他にも方法がある。そのために争うなんて愚かなことだ」、と。恐らく親神にはそれができるが、人間の彼女たちには難しいだろう。
この【真実】を公開しなければ、冒険フェイズの終了時に〈絶界〉にいる人々は怪物の餌食になってしまう。そうなったら、黒の領域にインガが2つ配置される。
【トリガー】
自分以外の【真実】が4つ公開された。
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このシナリオは〈絶界〉と化した「碧浦高校」を舞台にしているが、他の高校にしても構わない。その際留意すべき点は以下の二つである:
1)女子生徒が通う高校であること(女子高・共学)
2)校内に噴水があること
以上の条件が揃っていれば問題なく進行できる。
また、高校内にある施設は、一般的な物であればGMが自由に描写しても構わない。
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※最初に個別導入を行う場合、PCたちの予言に合わせてGMが描写してください。それぞれの神子に親神が任務を告げるシーンにすれば質疑応答もできるだろう。
※PC1の親神がアフロディテ、且つ個別導入を行った場合、内容が多少重複するので適宜に省略してください。アフロディテのセリフはPC2、3への説明になる。
予言を授かったPCたちは、その後すぐに万神殿に招集される。到着した神子たちを会議室のような部屋で出迎えたのは、アフロディテだ。
「わたしの黄金の林檎を盗むなんて、信じられないわ!」
怒りに燃えているアフロディテは、PCたちを呼んだ理由を説明してくれる。
「今言った通りよ。一番美しい女神、つまりわたしに贈られた黄金の林檎が何者かによって盗まれたの」
「その直後に〈絶界〉が発生したけれど、間違いなく犯人はそこに隠れているわ」
「あなたたち、今すぐ〈絶界〉へ行って、私の林檎を取り返してちょうだい!ついでに犯人も成敗しなさい!」
どうやらとある高校に〈絶界〉が発生したようだ。PCたちは任務について更にアフロディテに質問してもいい。林檎について尋ねる場合、【シナリオの概要】の「不和の林檎」の説明を参考に答えても構わない。
アフロディテはこれから「運命共同体」になってもらうPCたちに自己紹介をさせ、〈絶界〉へ向かうように命じる。
導入の最後に、「活力の決定」及び「冒険の準備」を行ってください。
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「開催!ミス・コンテスト」:冒険フェイズが始まった直後
「怪物の隠れ家」:「天城 すみれ」「新地 ひなた」「海藤 雪花」3人の【真実】が全部公開された直後のシーン
「漁夫の利」:PC3の【真実】が公開できず、冒険フェイズが終了するとき
「林檎園を守りしもの」:PC3の【真実】が公開され、冒険フェイズが終了するとき
1:校庭。ミス・コンテスト開催のために、大きなステージが設置されている。
2:教室。ミス・コンテストの優勝は誰のものだ、と議論している生徒たちの声が聞こえてくる。
3:体育館。コンテスト参加者のファンが作った応援グッズに埋め尽くされて、中を歩くことすら難しい。
4:保健室。コンテスト参加者やそのファンたちが喧嘩し、大なり小なり怪我してしまうこともあるため訪れる生徒も多い。
5:美術室。コンテスト参加者の肖像画が展示されている。宣伝用のものだろうか。
6:図書室。騒々しい学校の中で唯一静けさを保っている場所だが、そもそもここに訪れる生徒があまりいない。
1:でこぼこの道に足を取られて、躓いてしまう。1D6のダメージを受ける。
2:噴水よりも遙かに激しい水流に襲われ、神貨がいくつか流れてしまった。1D6の神貨を失う。
3:先の見えない道は一体どこに繋がっているのか。もしかすると、永遠に出口にたどり着けないかもしれない、と恐怖を覚えた。「臆病2」の変調を受ける。
4:暗闇の中から、怪物の大きく開いた口があなた達に迫り、呑み込もうとする。攻撃から逃れるために、【武勇】で判定を行う。失敗すると、2D6のダメージを受け、「堕落」の変調を受ける。
5:水に満ちた空間を通っている間、呼吸ができず息苦しさを覚えた。【生命力】を2点減少し、黒の領域にインガを1つ配置する。
6:光が届かない道を進んでいくうちに、方向感覚を失い迷ってしまった。黒以外の領域から好きなインガを2つ取り除き、もう一度試練表を振る。
PC2の【真実】に書かれている黄金の林檎に関する内容は、シナリオクリアの必須条件ではないため、達成されなくても全く問題ない。逆に、達成できたら追加の報酬をあげてもいい(詳細は【終了フェイズ】の項目を参照してください)。ボーナスになるので、ヒントを上げるかどうか、どれぐらい与えるかはGMが自由に決めていい。
以下の内容は、冒険フェイズ以降であれば判定いらずにRPだけで行えるものとする。
PC1:親神がアフロディテの場合、ラドンを倒せば林檎を奪還できるため、終了フェイズで渡すことができる。他の親神の場合、PC3(の親神)に頼み別の黄金の林檎を手に入れることができる。それに文字を刻むこともできる。
PC2:黄金の林檎を手に入れるために、PC1の親神(もしくはアフロディテ)に頼んでも断れるので達成できない。PC3(の親神)に頼めば達成できる。
PC3:親神に頼めば黄金の林檎を手に入れてくれる。二人分を頼んでも問題ない。
※GMが追加に説明を行いたい場合、PC3の親神がギリシャ神群の場合は「ヘスペリデスの園」を、北欧神群の場合は「女神イズン」を調べると有用な情報が得られる。
――― × ――― × ――― × ―――
冒険フェイズが始まった直後に発生。
早速〈絶界〉へ赴いた神子たち。目的地の碧浦高校は設立されて間もないのか、きれいな校舎やよく整備されている校庭を神子たちは目にするだろう。
一見何も異変が起きていないが、その時。校庭の隅から怒鳴り声が聞こえてきた。
「ミス・コンテストを優勝するのは私に決まってるわ、邪魔しようとしても無駄よ!」
「馬鹿言うんじゃないよ!優勝するのは私だし、黄金の林檎も私のものだから!先輩こそ妨害しないでくれます?」
「お、お二人とも……喧嘩はやめましょう…!」
声の方向を見れば、きれいに作られた噴水の近くに言い争っている女子生徒二人と、彼女たちを止めようとしているもう一人の生徒がいた。
※上から天城、新地、海藤のセリフ。
彼女たち以外にも、あちこちから優勝したいという女子生徒の呟きや、誰が優勝するのかを予想する声が聞こえる。
どうやら生徒は全員ミス・コンテストに注目しているようだ。その熱量が尋常ではないし、生徒の間は一触即発な雰囲気になっている。これも神話災害の影響だろうか?
それに、優勝者は賞品として「最も美しい女性に贈られる黄金の林檎」を獲得できるようだが、もしや盗まれた黄金の林檎のことだろうか?
GMはシーンの終わりに、「天城 すみれ」「新地 ひなた」「海藤 雪花」の予言を公開してください。
※優勝賞品が黄金の林檎となっているが、生徒たちはその在り処を知らない。学校内にある宣伝用ポスターなどには優勝賞品について書いてあるので、生徒たちがそう認識している。ポスターに関してはGMが自由に描写して構わない。
「天城 すみれ」「新地 ひなた」「海藤 雪花」3人の【真実】が全部公開された直後のシーンに発生。このシーンが開始した以降、PC2の【真実】は公開できるようになる。
PC2の親神から連絡が入り、任務が順調かどうかを尋ねる。PCたちが今まで得た情報を報告する(親神から尋ねてもいい)のなら、「『苗字2』や『名前1』、まるで何かの暗号みたいだ。意味のある言葉ではないだろうか?」とヒントをくれる。
PC2の【真実】が公開されたら、以下の内容を提示してください:
PC2の目の前に一枚の紙が降ってきた。「職員室に落ちていたものだが、これもヒントのようだ。今までのヒントと合わせて答えを導き出してくれ」と親神が告げる。
紙には「【ふ】【地】【天】【海】」の4文字が書かれている。これが怪物の居場所を示しているのだろうか。
○怪物の居場所について
1文字目は「ふ」。
2文字目は、地=新地ひなたのヒントを意味する。「苗字2」は苗字をひらがなで書く時の2文字目、つまり「しんち」の「ん」になる。
3文字目も同様に、天城の「名前1」で「す」。4文字目は、海藤の「苗字2」で「い」。
答えは「ふんすい」、校庭の隅にある噴水である。
PLがヒントの意味を理解できていない場合、適宜なタイミングで以下の追加ヒントを1つずつ開示してください。それでも分からない場合、GMは解き方を教えてあげても構わない(PLに謎解きさせるのはこのシナリオの主目的ではない)。
・答えは4文字、「ふ」はそのまま1文字目になる
・地、天、海はNPCたちそれぞれの【真実】に書かれているヒントに対応している
・【真実】のヒントは、NPCの名前をひらがなで書くとき、どの文字が答えかを示している
・地、天、海はNPCの苗字を指している。ヒントが示す文字をこの順番に並べる必要がある
PC3の【真実】が公開できず、冒険フェイズが終了するときに発生。
ミス・コンテストを巡って、生徒の間に口喧嘩が絶えなかったが、ついに暴力をもって相手をねじ伏せようとする生徒が現れた。
その被害はコンテストの参加者たちにも及ぶ。優勝候補を狙ってこぶしを振り上げる者、悪口に対して反撃する者。怪我を負う生徒が学校内のあちこちに現れ、いよいよ収拾がつかなくなる状況になった。
神子たちが止めようとしても、生徒の数が多すぎて手が回らないだろう。次々と生徒たちが倒れていく。そのとき、地面に亀裂が走る。裂けた地面はまるで無数の口のように、生徒たちを飲み込んでいく。深淵から漂う絶望の闇の気配が、これは怪物の仕業であることを示している。
そして、神子たちもまた亀裂から地底に落ちていく。その先に、怪物のような影が大きな口を開いてPCたちを飲み込もうとする。落下することによりPCは全員1D3のダメージを負う。
怪物を倒すためにはその口から逃れ、怪物の居場所にたどり着かなければならない。これは危険な旅になる。PCたちは全員「危険な旅」の判定を行ってください。失敗した場合、前述の試練表を使用する。
PC3の【真実】が公開され、冒険フェイズが終了するときに発生。
PCたちが「噴水」の答えにたどり着いた場合、怪物を倒すために校庭の隅にある噴水へ向かう。覗き込めば、噴水の底が見えず、真っ暗な水底はどこかへと通じる道になっているようだ。この道を辿れば、怪物の居場所へ向かうことができるだろう。
PCたちは全員「危険な旅」の判定を行ってください。失敗した場合、前述の試練表を使用する。
もし「噴水」の答えが分からなかった場合、マスターシーン「漁夫の利」と同様に、PCたちの足元の地面に亀裂が生じ、崩落した地面の下に怪物のような影が大きな口を開いてPCたちを飲み込もうとする。落下することによりPCは全員1D3のダメージを負う。その後、怪物の攻撃から逃れ、居場所にたどり着くために「危険な旅」の判定を行う。
神子たちが苦労してたどり着いた先には、高校の敷地よりも遙かに広い草原があった。
決戦フェイズに移行する。
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危険な旅を終え、神子たちの目の前にはどこまでも続きそうな草原が広がっていた。その中心に木が一本だけ植えてあるが、木には何も実っていないように見える。
代わりに、無数の頭を持ち、長く伸びる下半身は蛇のように木に巻き付く怪物が目に入る。どうやら、〈絶界〉を作り出した犯人はこの怪物で間違いないようだ。
100の頭を持つドラゴン、ラドンとの戦闘に入る。戦場は平地とする。
PC1の【真実】が公開された場合、脅威「惑わす声」を公開する。
パラグラフ1:惑わす声
パラグラフ2:巻き付く(基本ルルブP273)
パラグラフ3:毒の血(基本ルルブP280「毒の吐息」の改変)
パラグラフ4:百の頭
○本体:ラドン
Lv3 属性:緑
タグ:獣、竜、蛇
100の頭を持つドラゴン。眠っていない頭が常にあるため、蛇のように黄金の林檎の木に巻き付いて守っている。
攻撃値2 生命力35 防御値3
効果:【完璧な守護】本体に対する攻撃のダメージが半減される。
【百の命】緑の覚醒段階1つにつき、脅威「百の頭」の耐久度が1上昇する。
○パラグラフ1:惑わす声
術式 Lv1
百の頭からそれぞれ発せられた違う言葉が、頭を混乱させる。
タグ:音、口 判定:頭脳
攻撃値+2 耐久度6 防御値-1
効果:【惑わす】PC全員を目標に選ぶ。目標は「堕落」の変調を受ける。すでに「堕落」の変調を受けたPCは、[緑のインガの数]のダメージを受ける。
○パラグラフ2:巻き付く
基本ルールブックP273参照
○パラグラグ3:毒の血
術式 Lv2
毒矢に射貫かれたときから、その血もまた毒に染まり、触れるものを傷つけてしまう。
タグ:毒 判定:霊力
攻撃値+-0 耐久度9 防御値-1
効果:【猛毒の血】黒の属性でないPC全員は、「重傷3」の変調を受ける。また、黒の領域にインガを1つ配置する。
(基本ルルブP280「毒の吐息」の改変)
○パラグラフ4:百の頭
攻撃 Lv2
百の頭がそれぞれ口を開き、隙を見せることなく狙った獲物を飲み込む。
タグ:実体、口 判定:頭脳
威力2D6+1 攻撃値+1 耐久度8 防御値-1
効果:【範囲攻撃】欄外にいないPC全員が攻撃の目標になる。
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ルルブP256に書かれた「強制終了」の処理を行ってください。
力尽きたラドンは地面に落ちて倒れた。しかしその体はすぐに浮かび上がり、空高く昇っていく。
※ギリシャ神話でもラドンは星座にされたので、それに因んだ演出。
姿が見えなくなったころ、ラドンが守っていた木は光を放ち、その光が一点に収束すると、木に実る黄金の林檎になった。「最も美しい女神に」と文字が刻まれたそれはまさしく、アフロディテが失くした黄金の林檎だ。
PCたちが黄金の林檎を手に入れると、空気が揺れて、周りの景色は幻のよう消えていく。PCたちはいつの間にか碧浦高校の校庭に立っていた。どうやら〈絶界〉も消え去ったようだ。
生徒たちは、なぜか今までミス・コンテストにあれほどのめりこんでいたことを不思議に思っていたが、ミス・コンテスト自体はそのまま開催することになったようだ。しかし怪物が消えた今、元に戻った生徒たちはコンテストの後、再びいつも通りの学校生活を送ることになるだろう。
PCたちが万神殿に戻り、アフロディテに黄金の林檎を届けば、任務は終了になる。その後のエピローグはGMとPLが相談し、自由に描いてください。
PC1とPC2がそれぞれ黄金の林檎を手に入れたかどうかで、獲得する経験値やアイテムが変化する。
・PC1、PC2共に黄金の林檎をアフロディテ/親神に渡すことができたら、通常の「任務」や「冒険」達成の経験点がもらえる上、PC2の親神から報酬兼お小遣いとしてそれぞれ神貨3枚がもらえる(PC3も含めて)。
・PC1のみ黄金の林檎をアフロディテに渡した場合、全員通常通りの経験点がもらえる。
・PC2のみ黄金の林檎を親神に渡した場合、PC2のみ親神から報酬として神貨1枚が渡される。また、PC1は「任務」達成の経験点がもらえない。
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【予言】
3年生。天城財閥の娘。才色兼備だが、少々高飛車な性格のお嬢様。ミス・コンテスト優勝の最有力候補と言われている。
【真実】
本当は勉強熱心な真面目な子で、ミス・コンテストに全く興味がなかったが、神話災害の影響で今は優勝の座を狙っている。
つい先ほど、審査委員会から彼女宛てに内容が「名前1」の3文字のみのメールが届いたので、悪戯されたのではないかと怒っている様子。
この【真実】が公開されると、好きなインガを2つ配置することができる。
【トリガー】
いつでも公開できる。
【予言】
2年生。美人な上運動神経がよく、よくスポーツの試合に出ては賞を取るためファンも多い。負けず嫌いな一面もある。
【真実】
ミス・コンテストが面白そうと思っているが、優勝のためになりふり構わずになったのは神話災害の影響だ。
コンテストの宣伝ポスターに、自分の名前だけ印刷ミスで「苗字2」とプリントされたことで悩んでいる。
この【真実】が公開されると、好きなインガを2つ配置することができる。
【トリガー】
いつでも公開できる。
【予言】
1年生。可愛らしい顔に優しい性格で人気を博し、学年内のマドンナと言われている。他のミス・コンテスト参加者より落ち着きがあるように見える。
【真実】
実は人見知りだが、断るのが下手なので礼儀よく接することで他人から距離を取っていたつもりだった。ミス・コンテストへの参加も推薦を断れなかったからだ。
コンテストの投票用紙に、自分の名前だけ印刷ミスで「苗字2」とプリントされたことを知り、このまま参加していないことにしたいと考えている。
この【真実】が公開されると、黒のインガを1つ、好きな領域に移動することができる。
【トリガー】
いつでも公開できる。
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※シナリオ制作の裏話などです、読まなくてもシナリオを回せます。
●モチーフについて
前々から「不和の林檎」を題材にシナリオを書きたいとは思っていました。というのも私はギリシャ神話が大好きで、今までも何本かギリシャ神話をモチーフとするシナリオを書きました。しかしCoC、マギカロギア、インセインは書いたことがあっても、どのシステムともあまり似ていないアマデウスのシナリオはどう書けば…?とかなり試行錯誤をしました。どうにか形にできて本当によかったです…。
ちなみに、一番最初に「不和の林檎で書こう」と思ったのが恐らくこの時期です: https://twitter.com/sakari0621/status/738319504535588864 (Twitterより)
ふぁぼ(まだいいねではなかった)されたら現在考えているシナリオのあらすじを書く、というタグがきっかけとなって、このシナリオを思いつきました。このときはまだ「ミスコン」にしようと思っていなかったかな…?ただ単純に「林檎は争いの原因になるし、神話災害を引き起こすのにも適している」と考えたのでしょう。不和の林檎は比較的に有名な話なので、ぱっと思いついたんですかね。
●PCについて
「不和の林檎」をモチーフにしているので、あえて推奨親神を細かく指定させていただきました。
PC1の親神は不和の林檎に直接関わっていた女神の3人(ヘラ、アテナ、アフロディテ)から選んでもらうことで、「普通の黄金の林檎ではなく、不和の林檎そのものが欲しい」という動機が成立します。
PC2の親神は、黄金の林檎を知らないのでヤマト神群から選ぶように指定させてもらいました。私の知る限り、日本神話では黄金の林檎が登場していないからです。サプリを使用する場合、黄金の林檎が登場しない他の神話の神様に変更しても構いません(ただ、日本人は食に対する探究心が強いと思うので、やはりヤマト神群が適しているのかなと…)。
PC3の親神は黄金の林檎を知らなければならないので、関連する記述のあるギリシャ(もしくは北欧)神話の神様から選ぶように指定させてもらいました。他に黄金の林檎が登場する神話があれば、そちらの神様に変更しても構いません。
黄金の林檎は番人などに守られているので、たとえ神様であっても本来は簡単に手に入れられるものではありませんが、そこはシナリオの都合ということで。【真実】にちょっとした謎解き要素を入れたのもおまけのつもりなので、このあたりの設定は緩めにしています。本文内にも補足しましたが、PvPをさせるつもりもなければ、諦めてもペナルティーはありません。GMが適度に助け舟を出すのもありでしょう。
●NPCについて
3人なので学年をバラバラにしました。こちらもちょっとした謎解きに使ったので、名前に特定の漢字を入れることは決まっていたけど、他にもテーマを決めていました。苗字のほうはわかりやすく「天・地・海」でまとめています。名前はギリシャ神話に登場する花から取っています。
・すみれ→アポロンに愛される女性が彼を拒否したことで、アポロンが怒って彼女をスミレ変えてしまった(アルテミスに助けを求めたからアルテミスが彼女をスミレに変えた説もある)。
・ひなた→向日葵から取った名前で、日向(ひなた)。アポロンに恋した水のニンフが空を見上げて、彼の姿をずっと目で追いかけているうちにひまわりに姿を変えた。
・雪花→スイセンの別名「雪中花」から。泉に映る自分の姿に恋した青年が死後スイセンに姿を変えたという神話から。
●ラドンについて
シナリオを書くにあたって改めて調べたけど、Wikipediaにラドンは炎を吐くという記述を見てその設定を採用しかけた。けど英語版や他の神話紹介サイトでは一切見かけない記述なので、途中から慌てて脅威や試練表を修正しました。この文章を書いている時点で改めてWikipediaを覗いてみたところ、日本語版での該当記述は削除されたようで、やはり間違いだったようですね。
脅威に関しては相当悩みましたが、「毒」に関連するものは独自の設定というか、神話の拡大解釈というべきでしょうか。不和の林檎とは別件ですが、ラドンはヘラクレスの毒矢に殺されたので、その毒がまだ血に残っているのではないか…と考えて脅威を決めました。このシナリオのための改変になりますね。
ところでラドンはドラゴンというよりも蛇っぽい(記述的にはSerpent)見た目をしているのですが、一応ドラゴンで間違いないという説もあるので、そのまま採用しています。西洋においてSerpentとDragonは意外と近い存在のようで、調べると結構面白いので興味があればぜひ確かめてみてください。
長くなりましたけど、アマデウスを楽しんでいただけると幸いです!違うシステムになるかもしれませんが、また神話関連のシナリオも書いていきたいですね。